トヨタとGMが豪州生産から撤退、激変する自動車勢力図オーストラリア生産から撤退するGMホールデンの人気車種アストラ。全長4386mm、エンジンは1.4Lと1.6L

豪州、英国、インド
変わる自動車メーカー勢力図

 世界の自動車生産地と自動車メーカー勢力図がいま、大きく変わりつつある。年内にオーストラリアからトヨタとGMが生産拠点を撤退し、オーストラリアは完全な自動車輸入国になる。

 仏・PSAグループ(プジョー/シトロエンなど)が米・GM(ゼネラルモーターズ)からオペル/ボグゾールを買収したため、英国には久々に仏系メーカーが誕生する。

 インドのマヒンドラ・アンド・マヒンドラ(M&M)は買収した韓国・双龍(サンヨン)自動車の資産を活用した商品展開を進め、同じ韓国の現代(ヒュンダイ)に対抗している。

 ひとつひとつは大きな出来事ではないが、世界の自動車産業がつねに時代のうねりの中にある状況がよくわかる。

 事例ごとに説明しよう。まずオーストラリア。GMは2013年末に、トヨタは14年2月に、それぞれオーストラリア子会社による車両およびエンジンの生産終了を発表していた。その実施が今年である。1980年代半ばの最盛期にはフォード、日産、三菱、ダイムラー・ベンツがそれぞれ乗用車を生産し、米・ナビスター・インターナショナルとボルボはトラックを製造していた。一時期、日産はブルーバードを、三菱はマグナをオーストラリアから日本に輸出していた。

 オーストラリアからの生産撤退は1トンピックアップトラック(PUT)から始まった。ASEAN(東南アジア諸国連合)の自動車市場が拡大した80年代末に、日産と三菱はアジア太平洋地域の1トンPUT生産をタイに集約する方針を決め、トヨタも同様にPUT生産をタイに移管する。タイはPUTを国民車として扱い購入税を優遇していたため、同国で生産活動を行う日系メーカーが、PUTの集中生産に乗り出したのである。