私たちの体の中には、「体内時計」と呼ばれる時間が備わっています。
この体内時計を動かす源にあるのが「時計遺伝子」(体内時計をつかさどる遺伝子群)で、私たち人間の体はこの遺伝子によって、目覚める、お腹が減る、眠くなる、などといった生きるための基本的なリズムを刻んでいます。人体の活動の多くは時計遺伝子によって支配されているといってもいいかもしれません。
この時計遺伝子の働きに基づいた時間医学、時間栄養学といった最新の科学的知見をベースにして、体内時計に従って日々、常に快適で効率よく過ごす秘訣を『最新の科学でわかった! 最強の24時間』(ダイヤモンド社)より抜粋して紹介します。

夜更かしが絶対に悪いとは言えない理由

夜型、不規則な人でも
リズムを保つ秘訣がある

 世の中には、体のリズムなど気にかけず好き勝手に生きているのに、いつも元気な人がいるでしょう。
 こうした人の場合、健康診断の数値が仮に基準値に収まっていたとしても、体の中では時差ボケ(=体内時計のズレ)が確実に起きています。ただ、それが体に悪いことであるとは必ずしもいえません。不規則なのに元気であるということは、「時差ボケに適応している」ともいえるからです。

 時間栄養学の研究者である柴田重信氏(早稲田大学先進理工学研究科教授)は、
「男性のヒゲを採取して時計遺伝子の活動量を1日ごとに調べていくと、朝型の生活をしている人はいつも似ていますが、夜型の人は月曜と金曜ではかなり違っています。不規則な生活は体に影響を与えていることになりますから、時差ボケに適応できている人も、加齢とともに体調を崩してしまう可能性はあるでしょう」
 と言います。

 もちろん個人差はありますから、なかにはうまく適応したまま、ずっと元気でいられる人もいるかもしれません。
柴田氏によると、同じ不規則な生活であっても、問題になるのは「日によって起床と就寝がバラバラなケース」であるといいます。

「朝の日差しでなくても、光を浴びることで時計遺伝子はリセットされますから、夜更かしや朝寝坊が絶対に悪いとまではいえません。人間は昼行性の動物であるという大原則はありますが、夜中の2時に寝て朝10時に起きる生活でも、その習慣が規則的に続いていけば、体内時計のリズムは刻まれます。こうしたリズムが崩れること自体に問題があるのです」(柴田氏)

 シフトワークの人はその点で負荷がかかってしまうところがありますが、「3日同じ時間帯で勤務し、1日休みを空けて、別の時間帯に移行させるなど、不規則な中でもリズムを工夫するとズレが少なくなる」とのこと。その意味では、不規則な生活をしているのに元気な人は、一見すると不規則なようで、自分なりのリズムを刻めているのかもしれません。

 また、日常の動作や習慣をパターン化し、ルーティンにすることも「体内時計を整える点でも効果がある」(柴田氏)といいます。

 自然のリズムに合わせた生活を守らなければ健康になれないわけではなく、与えられた環境の中で自分なりのリズムをつくること、それが活力を生み出す土台になっていくのです。