引きこもり長期化にも見える「いじめ後遺症」の呪縛引きこもる中高年の多くは、過去「いじめ」に耐え続けた経験があるのではないか(※写真はイメージです。)

「中高年引きこもり」の一因は
「いじめ後遺症」ではないか?

 いじめが終わっても、心の傷は消えない。そうした「いじめ後遺症」と、その後に続く「引きこもり」状態との因果関係も指摘されている。

「学校という閉鎖的環境では、一般社会と違った秩序が生じる。その閉じられた秩序の中では、犯罪を起こしてはいけないルールよりも、その場のノリを乱してはいけない空気のほうが、はるかに優先される。しかも、逃げることができない」

 そう説明するのは、千葉県南房総市に住む斉藤潤さん(38歳)。「いじめは、尊厳の破壊をもたらすため、一度人生をつまずいてしまった人は、なかなか立ち上がれなくなる」と指摘する。

 斉藤さんがいじめられていたのは、小学校2年のときから5年間にわたる。

 その間、いじめられたはずみで、学校から走って逃げ帰ったこともあった。すぐに教師が迎えに来て連れ戻されたが、「何があったの?」と事情を聞かれることはなかった。

 まだ1980年代の頃のことだ。当時「不登校」という言葉はなく、学校は行かなければいけないものだと思い込んでいた。

「長期にわたって無理やり通って耐え続けるというのは、ものすごくエネルギーを使うことだったんです」

「こっちに近づくな」などとからかわれるような、大したいじめの内容ではなくても、長期化すると「効果てきめんだった」と振り返る。

 10代後半になって、外を歩いていたら、通りがかりの見知らぬグループが、自分を嘲笑しているように思えた。それでも、当時は「引きこもる」という選択肢があることも知らず、無理矢理外に出ようと頑張り続けた。

 いじめに遭っているとき、周囲の大人は家族を含めて誰も助けてくれなかった。その出来事は昔のことであると割り切り、都内で仕事も見つけて、一度は実家から独立することができた。しかし、職場でのトラブルによるストレスでうつ病にかかり、仕事を続けることができなくなった。