上司をマネジメントする<br />彼らの成果を上げることが部下の成果のカギを握るダイヤモンド社刊
1680円(税込)

「現実は企業ドラマとは違う。部下が無能な上司を倒し、乗り越えて地位を得るなどということは起こらない。上司が昇進できなければ、部下はその上司の後ろで立ち往生するだけである」(『プロフェッショナルの原点』)

 ドラッカーは、いかにして機能する社会をつくり、組織に成果を上げさせ、一人ひとりの人間に自己実現させるかについて考えた。すべて社会的存在としての人間の幸せのためである。そのドラッカーが、上司のマネジメントの仕方を教える。

 なぜと問うならば、あなたが上司に成果を上げさせることが、組織に成果を上げさせ、全人類の福祉に貢献させるからだと答える。

 上司にいかに対処するかに悩まない者はいない。大勢の人が教えてもらいたがっている。

 ドラッカーの答えは簡単である。仕事で成果を上げている者ならば、皆知っていることだという。上司の強みを生かすことである。

 それは、部下自身が成果を上げるカギでもあるという。「昇進していく上司の部下になることが、成果をあげるためのベストの方法である」。

 しかし、念には念を入れなければならない。上司が成果を上げるためには、何が役に立ち、何が邪魔になっているのかを直接本人に聞かなければならない。

 もっとも、上司を改造し、経営学の教科書に書いてある理想的上司のモデルに仕立て上げようなどと考えてはならない。あるがままの上司が、個性ある人間として存分に仕事ができるようにすることが部下たる者の務めである。

 もう一つ務めがある。上司を不意打ちから守ることである。「ビジネスの世界に、うれしい不意打ちはなく、責任のあることについて不意打ちされることは、恥をかかされ、傷つけられることになる」からである。

「上司をマネジメントすることが重要であることを認識している者があまりに少ない。困ったことには、上司をマネジメントできることを知っている者もあまりいない。上司についてこぼしはしても、彼らをマネジメントしようと試みる者はさらにいない。しかし、上司のマネジメントはかなり容易である。部下のマネジメントよりもはるかに容易である」(『プロフェッショナルの原点』)