世界のエネルギーバランスが揺らぐなか、シェールガスをめぐる攻防が激化している。米国エネルギー省は5月、FTA締結国に限られていた液化天然ガス(LNG)の輸出解禁を認可、太平洋横断という新たなLNG流通ルート開拓に着手した。国内では大手商社が欧州という新市場のシェールガス権益獲得に乗り出した。

シェールガスが揺るがす<br />世界のエネルギー安全保障シェールガスを求め、欧米企業の進出が続くポーランドの探鉱現場。ポーランドの国土は他の欧州諸国に比べて都市化率が低いため、大規模開発を進めやすいというメリットもある
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「探鉱で確度が高まり次第、一気に開発の推進と拡大を図りたい」(加藤広之・三井物産エネルギー第1本部長)

 先月、新型天然ガス「シェールガス」の権益を求め、ポーランドでのプロジェクトに参画することを決めた三井物産。日本企業では、欧州のシェールガスに進出する初のケースとなる。

 三井物産は、現地子会社を通じて米石油開発大手、マラソン・オイルから権益の9%を取得する方針だ。三井物産が欧州にいち早く進出を果たした背景には、両社がロシア・サハリン2プロジェクトの当初の出資パートナーとして「旧知の間柄」(三井物産幹部)だったことがある。事実、マラソン・オイルの・旧友・への信頼度は高く、当初、三井物産に49%もの権益取得を打診してきたといわれる。三井物産は探鉱を進め、同国におけるシェールガス事業進出への橋頭堡としたい考えだ。

 加藤エネルギー第1本部長は、今後の出資拡大もありうるとしたうえで「ポーランドのシェールガスのポテンシャルは欧州最大。地政学的なポートフォリオからも・北米以外・のシェールガスへ進出した意義は大きい」と胸を張る。

これまでシェールガス権益獲得のための日本企業の進出は、米国やカナダに限られてきた。だが、世界の関心度の高さでいえば、じつはポーランドは北米に比肩する。

 ポーランドは現在、天然ガスの6割超をロシアに依存する輸入国だ。ところが現在、同国は、このロシアのくびきから逃れることを可能にする・金脈・の発見に大きくわき立っている。

 米国エネルギー省などの試算によれば、ポーランドのシェールガス埋蔵量は少なくとも1.4兆~5.3兆立方メートル。これは同国の200~300年分の需要量に匹敵する。欧州各国で開発が始まるなか、ポーランドは一、二を争う・シェールガス大国・に躍り出ることが確実視されているのだ。