1964年の創業以来、日本屈指の縫製工場として業界をけん引し、国内紳士服の歴史を舞台裏で支えてきた「ファイブワン・ファクトリー」。長い歳月をかけて築き上げた独自の縫製技術・生産体制もさることながら、オーダーメードのノウハウを兼ね備えたスーツ・ファクトリーは、他に類を見ない。それらの強みを最大限に生かすべく生まれたのが、オーダースーツに特化したブランド「ファイブワン」だ。
text: Yuriko Kishi、photographs: Hiroe Ueda

 人それぞれ顔も違えば、体形も違う。肩一つを取っても、いかり肩やなで肩の人もいれば、左右の肩幅が微妙に異なる人もいる。オーダースーツはそうした体の癖や体形を補正して、スマートに、カッコよく演出してくれる自分だけの特別な一着だ。

袖を通した瞬間に分かる、
体に吸い付くような極上の着心地

ファイブワン大阪本店・店長兼ブランディング マネージャーの中吉俊貴氏。2着目以降のオーダーは、服地やデザイン・ディテールのみの相談で、「後は任せる」というケースも多く、顧客から寄せられる信頼は厚い
FIVEONE 大阪本店
大阪府大阪市北区梅田2‐5‐5 桜橋ホワイトビル1F TEL:06‐6136‐6169(予約制)

 「ファイブワンのオーダースーツは、【服地選び→採寸・フィッティング→デザイン選び→裁断・縫製→仕上げ】の流れに沿って、お作りしています。より心地良く、見た目にも美しいフィット感を実現するためには、何といっても、採寸とフィッティングが要です。それらと、縫製をはじめとする製造技術の融合によって、世界に一着のスーツが生まれます」と話すのは、ファイブワン大阪本店・店長兼ブランディング マネージャーの中吉俊貴氏だ。

 採寸とフィッティングは、各店舗に常駐する“フィッター”と呼ばれる専門スタッフが行う。工場研修を積むなどして、“モノづくりの裏側”を熟知したスタッフは、服地やデザインの要望についてはもちろん、どんなささいなことでも、納得のいくまで、平易な言葉で、丁寧に説明してくれる。

 「オーダースーツが初めてのお客さまは、いろいろと悩まれることもあるのですが、その方の体形に最も近い“ゲージ服”に袖を通していただくと、着心地の良さをすぐに実感されることがほとんどです。『今までのスーツと違って、フィットしているのに動きやすい』『体に吸い付くような着心地』といった感想を頂きます」

 ゲージ服を基に、さらに約14カ所の採寸データを取り込み、体形補正を行った後は、ファクトリーの職人たちにバトンが手渡される。