お盆には毎年、信州・松本にある婚家の実家で過ごすのですが、一番の楽しみは、庭に生えてくる茗荷狩りです。小川に面しているために湿気が多く、母屋と納屋に挟まれて日照時間が短い庭の一部は、茗荷が育つ環境が整っており、多い時には一日30個以上の茗荷が採れます。

 現在では、ハウス栽培された高地産の茗荷が年中手に入りますが、本来の旬は6~9月。

 小ぶりで蕾が固く、ふっくらしているものが美味しく、蕾が開いて柔らかくなってくると、花に栄養が取られるせいか、香りやみずみずしさが損なわれていくように思います。

 ほのかに黄色味を帯びた可憐な白い花が終り、葉が伸びると、短期間ではありますが、茗荷竹《みょうがたけ》と呼ばれる若い茎が出荷されるようになります。料理の付け合わせとして添えられることが多く、新生姜のように先の白い部分を丸かじりしていただきます。

卑弥呼の時代から日本人に愛されてきた<br />香味野菜「茗荷《みょうが》」茗荷の卵とじ
【材料】茗荷…3本/卵…3個/ねぎ…1/2本/ごま油…大さじ1/だし…1カップ/酒…大さじ2/みりん…大さじ2/しょうゆ…大さじ1
【作り方】①鍋にごま油を熱し、千切りにした茗荷をサッと炒める。②1にだし、酒、みりん、しょうゆを入れて煮立て、溶き卵を入れて大きく2回かきまぜる。大きめの千切りにしたねぎを散らし、半熟状態になったら火を止め、鍋に蓋をしてお好みの固さになるまで余熱で蒸らす。

 ショウガ科の多年草である茗荷は、生姜と同じく東アジアが原産とされています。邪馬台国(2~3世紀)のことが書かれている『魏志倭人伝』に、「襄荷《じょうか》」として茗荷の記載があることから、卑弥呼の時代にはすでに日本に在来していたことが分かっています。

 また、平安時代前期に書かれた日本最古の薬物事典『本草和名《ほんぞうわみょう》』には、茗荷の古名である「女加《めか》」の名で登場し、平安時代中期に編纂された法典『延喜式《えんぎしき》』では茗荷が栽培されていたという記述があります。