菅首相は8月10日、いわゆる「退陣3条件」のうち、残っていた特例公債法案と再生可能エネルギー固定価格買い取り法案の成立に合わせて退陣する考えを明言した。すでに両法案については、民主・自民両党が今月26日までに成立させることで合意しており、これで菅首相の月内退陣は確実な情勢となった。

 新首相を選ぶ民主党代表選は月内にも行われる見通しとなっており(28日の代表選実施、月内の首相指名等が想定されているようだ)、早ければ月内にも新首相が誕生することになる。

先行する野田財務相は大連立を志向

 このような状況の中で、民主党代表選で先行する野田財務相は「もっと意思決定を迅速にでき、互いに責任を持ち合う体制がいい」と語り、自民・公明両党との大連立を目指す考えを明らかにした。報道によると岡田幹事長や前原前外相も大連立には前向きのようだ。またメディアも「大連立が代表選の焦点になる」等と、一緒にはやし立てている。

 ちょっと待ってほしい。大連立は、円滑な政策遂行のための一つの手段あるいは方便ではあるかも知れないが、いかなる意味でも政策ではあり得ない。

 いやしくも、一国のリーダーを新しく選ぶのであるから、政策の対立軸を少しは明確にして正面から政策論争を行ってほしいと願うのは、はなから無理な相談なのだろうか。せめてメディアはそのことをはっきりと指摘すべきではないのか。

 そういったジャーナリズムとしてのごく基本的な視点をも忘れ去り、「大連立が代表選の焦点」等と無自覚に書き散らかすようなメディアなら、一体どこにメディアとしての存在意義があると言うのだろうか。

 メディアに期待が持てないのであれば、私たち市民が政策論争の枠組みを提示する他はない。