労働現場でヒトを超人にする「着るロボット」が目指す“力の平等”藤本弘道・ATOUN(アトウン)社長 Photo by Reiji Murai
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 地上2メートルの高さまで手が届き、重さ100キログラムの荷物を軽々と持ち上げて、二足歩行で悠々と段差を越えて移動する──。

 高さ1.6メートル、重さ230キログラムのヒト型ロボットの名称は、「NIO(ニオー)」。奈良県の名所、東大寺の金剛力士像の「仁王」にちなんで名付けた。

 建設現場や災害現場での活躍が見込まれる重作業用の装着型ロボット。その開発を手掛けるのが、奈良市内に小さな本社を構えるATOUN(アトウン)社長の藤本弘道だ。

 実はこの装着型ロボット、昨年まで「パワーローダー」という呼称を使っていた。ずばり映画「エイリアン2」に登場するヒト型の重作業ロボットの名前で、映画の中ではエイリアンとの戦闘にも使われた。

 では、藤本の頭の中では、映画で表現されたように、重作業現場でヒト型ロボットが活躍する未来が描かれているのだろうか。

 しかし、そんな想像を藤本はきっぱり否定する。「作業現場で操作するロボットは、ヒト型である必要はありません。NIOはそのまま製品になるわけではなく、お客さまと対話するためのプロトタイプです」と語る。

 しなやかに動く腕部分と軽やかに二足歩行できる脚部分をつなぎ合わせて、ヒト型ロボットとして完成したのがNIO。これを顧客に見せつつ現場のニーズを聞き出し、腕や脚を別個に提案する。つまり、ヒト型ロボットの腕や脚の「ばら売り」によって、新たな装着型ロボットを作り出すのが藤本のやり方なのだ。