受託生産主体で外需頼みの成長モデルであったがゆえに2008年以降の世界同時不況の影響をもろに受けた台湾はその後、個人消費・民間投資の促進政策を矢継ぎ早に打ち出し、中国との交流を拡大させ、経済構造の転換を大胆に図ってきた。その甲斐あって、2010年は10%を上回る成長を達成し、日米欧経済が混迷を深める今年も5%近い成長率を維持する見通しだ。改革の旗振り役を務めてきた台湾行政院(内閣)経済建設委員会の劉憶如主任委員(閣僚に相当)は、輸出と内需という“ダブルエンジン”の成長モデルに自信を深めていると語る。台日関係の行方と合わせて、台湾の経済戦略を聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 麻生祐司)

――経済構造改革への手ごたえはどうか。

台湾の知られざる変貌<br />人口2300万人の小さな巨人が目指す<br />輸出と内需の“ダブルエンジン”成長モデル<br />~劉憶如・台湾経済担当大臣に聞く劉憶如(Dr. Christina Y. Liu)
台湾で経済政策を統括する行政院(内閣)経済建設委員会の主任委員(日本の閣僚に相当)。シカゴ大学で経営学修士号(MBA)と経済学博士号を取得。台湾大学教授、立法委員(国会議員)、大和総研の首席経済顧問、台湾中国信託金融控股公司(Chinatrust Financial Holding Co,. Ltd)のチーフエコノミスト等を経て現職。

 具体的な数字で示そう。まず2010年の台湾の実質経済成長率は10.88%と、1987年以来の高水準となった。アジアではシンガポール(14.47%)に次ぐ高さであり、われわれのやってきたことが間違いではなかったことを示している。

 ご存じのとおり、台湾も他の国々と同じく、2008年の世界金融危機の影響を受けて、一時は景気の急速な冷え込みを経験した(08年の成長率は0.73%、09年は-1.93%)。その主因が(世界景気の変動の影響を受けやすい電子部品や化学品などの)輸出に依存する経済構造にあることは明白だった。そのため、われわれはここ数年、内需の拡大や世界経済変動への耐性が強い新興産業の育成などに力を入れてきた。

 2010年の経済成長率への寄与度で、内需が純輸出よりも高い(前者が8.48%で後者が2.40%)ことは、こうした施策の正しさを証明している。内需は消費と投資、政府支出から構成されるが、2010年は民間投資が前年比32.51%伸びて、とりわけ大きく貢献した。

 さすがに今年は昨年の急拡大の反動で、民間投資は伸び悩んでいるが、それでも消費は高水準を保ち、欧米経済の混乱を受けて多くの国々が成長率を落とす中でも、台湾は第2四半期に4.88%の経済成長を維持し、通年で4.8%を成長目標としている。

 私は常々、輸出と内需のダブルエンジンの成長モデル確立の必要性を説いてきたが、現状は狙い通りに進んでいる。むろん、世界経済の低迷の程度によっては台湾経済も影響は免れないが、少なくとも内需という第二のエンジンが備わっていることは大きな安心だ。