EUは自国の利益を優先して結束が崩壊
再燃を繰り返すギリシャ危機の“呪縛”

 財政危機に陥っているギリシャ情勢が、いよいよ予断を許さぬ事態になりつつある。

 今年7月21日、ユーロ圏の首脳会議でギリシャに対する金融支援策が合意され、一時危機は沈静化した。ところが8月に入ると、フィンランドがギリシャ向けの支援に対して担保を要求したころから、少し雲行きが怪しくなった。

 9月2日には、当事者であるギリシャが、財政赤字削減の目標を達成することができないと発表した。それによって、国際通貨基金(IMF)などの同国に対する審査が中断され、ギリシャに対する金融支援が予定通り実施されない可能性が高まった。

 それと同時に、ドイツやオランダなどの国内世論が、金融支援に対して一段と批判の度合いを強め始めた。9月4日のドイツの州議会選挙では、政権与党が大敗を喫し、9月9日にドイツ出身のシュテルクECB(欧州中央銀行)理事は、ECBによるスペインなどの国債買い支えに抗議して、任期半ばで辞任した。

 こうした流れの中で、それぞれの国が自国の利益を優先する行動をとり始めていることにより、ユーロ圏の結束が大きく低下している。

 ギリシャは歴史のある国だが、現在の経済規模は小さい。それにもかからず、今回の危機が世界的な信用不安の引き金になることが懸念されている。

 その理由は2つある。1つは、EUの構造問題が露呈していることだ。

 もともとユーロ諸国は、発足当初はそれぞれ異なる事情を抱えながらまとまっていたのだが、ここへ来てその結束の低下が決定的になり、ユーロ圏諸国自身では容易に収拾がつかない局面に入っている。

 もう1つは、EU内の金融機関の経営問題だ。信用不安をギリシャで食い止められず、スペインやイタリアまで波及すると、それらの諸国に資金を貸し付けている金融機関の経営状態が悪化する。