エネルギーや金属など多くの国際商品相場がじわりと上昇している。原油は、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)がなかなか1バレル当たり50ドルを超えられないなど上値が重い印象があるが、6月下旬の安値に比べると1割ほど高い。

 銅相場は7月に節目の1トン当たり6000ドルを回復した後も上昇傾向を維持し、足元は2014年11月以来の高値を付けている。鋼材の防錆用メッキが主用途である亜鉛の相場は1トン当たり3000ドルを上回り、約10年ぶりの高値を記録している。ステンレス鋼の原料であるニッケルや、輸送機械の軽量化需要などが旺盛なアルミニウムも含めて、工業原材料となる非鉄全般で相場が堅調に推移している。

 なお、銅は、大鉱山でのストライキなどにより、昨年までに比べて供給が不安定になっている。亜鉛は、資源大手グレンコアの減産継続などから需給がタイトである。ニッケルは電気自動車用の電池需要への期待も生じている。アルミニウムは、中国政府の環境規制強化により、精錬能力削減が進み始めている。原油も、米国で在庫が減少傾向にある。各品目とも個別の相場押し上げ材料がある。

 国際商品相場の多くが堅調に推移している背景には、中国景気の堅調さと、為替市場におけるドル安という二大要因がある。中国景気は、春ごろには減速が懸念されていたが、その後、想定よりも堅調なことが明らかになった。また、ECB(欧州中央銀行)の金融政策正常化に向けた動きへの期待感が強まる一方で、米トランプ政権に対する先行き不透明感が高まった状態が続き、ドル安が進んだことも、ドル建てで取引される国際商品価格の押し上げ要因となった。

 8月25日のジャクソンホール会議での講演では、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は金融政策に言及せず、ドラギECB総裁はユーロ高をけん制するような発言を行わなかった。

 会議前には、FRBによる年内追加利上げが示唆されるとの思惑や、ユーロ高への警戒感が示されるとの見方があったが、肩透かしを食らう形となり、ドル安・ユーロ高が進み、国際商品相場の支援材料になった。

 今後も中国景気の堅調とドル安という、相場が上昇しやすい環境が持続するかは予断を許さない。

 上述のように、相場上昇を連想させる個別要因があるとはいえ、中国では、共産党大会後に当局が経済成長率の減速を容認するスタンスに戻る可能性があるし、FRBによるバランスシート縮小、追加利上げや欧州からのユーロ高けん制がドル相場を反転させるリスクもある。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)