日本の企業が大きく変革すべき時を迎えている。少子高齢化による働き手の不足、長時間労働に端を発する労働者の自殺、先進国の中でも低い国民1人当たりの生産性―。最近、話題となるこれらの社会問題は、成熟化を続けてきた日本経済が直面している大きな課題であり、グローバル化が進む中で日本だけが埋没しないためには、必ず乗り越えなければならない壁でもある。

 日本企業がこの壁を乗り越えるための必須要件は「働き方改革」と目されている。製造業大手など、ロボット化やAI(人工知能)導入といった大規模なインフラ整備によって対応しようとするケースも見られるが、資金や人的リソースが十分でない企業にとってはハードルが高い対策だ。

 国が音頭を取って進めている「働き方改革」。企業によっては「うちは何をすべきか……」と思い悩むこともあるだろうが、素直に考えて、その第一歩は「長時間労働の是正」「労働時間の短縮」であろう。厚生労働省の統計によると、パートタイムの労働時間が含まれているため総労働時間は減っているものの、労働者1人当たりの所定外労働時間は、時短気運の高まりに比してなかなか下がっていかない。

 しかし、企業が現状の生産性を維持しながら労働時間の短縮を達成できれば、それは同時に「生産効率の向上」につながり、従業員の「ワーク・ライフ・バランス」への寄与も意味する。そして企業によっては、新たに生まれた余力や余裕でさらに生産性の高いビジネスやイノベーションにチャレンジして、一段高いレベルの成長を目指すこともできる。

 「労働時間の短縮」において、にわかに注目を集めているのが「総務」の分野だ。総務、人事、経理などの部門は、大企業から中小企業までどの企業にも存在し、コスト・人員削減のあおりを受けて雑務が集中し、長時間労働が慢性化しているケースも少なくない。一方で、どの企業でも業務の本質は同じであり、営業やマーケティング、製造などの部門と比べて、業務の無駄が見えやすい。従って、ITを活用した業務効率化のノウハウを確立すれば、それを汎用的に利用することができる。また、現場部門と経営をつなぐハブという役割上、総務部門での働き方改革や業務効率化の精神は全社的に発信しやすく、新しい企業文化として定着させることもできる。

 総務部門の働き方改革は、企業全体の革新への第一歩といえるのだ。