総務は社内全体の管理・運営に加えて、備品の管理や発注から社内イベントのサポートまで多種多様な業務を担当している。政府が「働き方改革」を掲げる中、これら総務の業務をアウトソース(外注)する「総務アウトソーシング」が注目を集めている。業務の効率化を図り、社員がコア業務に集中できる環境を実現する「総務アウトソーシング」について、アウトソーシング業界で20年以上の実績を持つNOCアウトソーシング&コンサルティングでスーパーバイザー(運用管理者)として活躍する根岸こず恵さんに解説してもらった。

雑多な総務・庶務の業務もまとめてアウトソーシングが可能

 日本には、まず人がいてそこに仕事が割り振られるという仕事文化があると、NOCアウトソーシング&コンサルティングの根岸こず恵さんは指摘する。「これは総務に限ったことではありませんが、特に総務の業務は属人化しやすいという特徴があります」。

NOC日本アウトソーシング・コンサルティング スーパーバイザー 根岸こず恵さん根岸こず恵 NOCアウトソーシング&コンサルティング アウトソーシング事業本部 ビジネスソリューション第1部 オフィスサポート2グループ スーパーバイザー
株式会社の設立支援、事業会社の管理本部等で人事、総務、経理業務に携わった後、2011年2月にNOC日本アウトソーシング(現・NOCアウトソーシング&コンサルティング)に入社。現在は外資系コンサルティングを始め複数社のSV(スーパーバイザー)業務を担当している。

 そのため、担当者以外にはどんな仕事がどのように進められているかが見えにくく、担当者が退職した場合などには業務に支障をきたすことが少なくないという。また、雑多な業務に時間を取られて、本来の業務を行う時間が不足し長時間勤務になってしまうといった問題も発生する。

「そうした問題を解決する一つの手段が、総務アウトソーシングです。ただし、一口に『総務アウトソーシング』と言っても、アウトソーサー(外注先)によって請け負う業務の内容には違いがあります。NOCアウトソーシング&コンサルティングの場合は、総務・庶務をメインに、メール室運営、受付なども総務アウトソーシングのサービスを提供しています」

 企業によって内容がまったく異なるのが、総務・庶務の業務だ。企業としてはアウトソースしたい業務だが、どこまで外に出せるのか当事者である企業側にもわからない場合が多い。

「一般的には、備品の補充・管理、名刺の作成・管理、観葉植物やウォーターサーバーの業者管理などがありますが、たとえば製薬会社の導入事例では、MR(医薬情報担当者)が営業活動に使う車両の手配・管理も総務・庶務の業務のひとつでした。アウトソーサーによって対応は異なると思いますが、NOCの場合は何をして欲しいかというお客様のニーズをまず伺って、できるだけ希望に合わせていくことを基本としています」

 メール室の基本的な業務は、郵便物の差し出しや受け取りの対応、社内便の回収と配布などだが、メール室運営も企業によってどこまでやって欲しいかが大きく異なると、根岸さんは説明する。「部署ごとに仕分けして、あとはメール室に取りに来てもらうという企業もあれば、個人ごとに配って欲しいというケースもあります。また、荷物が多く外部の倉庫を使うということも。メール室運営に関しても、できるだけお客様の希望に合わせて進めていきます」

 来客の応対や電話の取次ぎなどが中心となる受付業務だが、現在は正社員で対応する企業は減っており、派遣社員の利用が主流になっていると根岸さん。「受付は、総務の他の業務から独立しているため切り離しやすいのが特徴です。派遣からアウトソーシングに移行するハードルも低いと言えます」

 表面的なコストでは、時間給である派遣社員のほうが管理費込みのアウトソーシングより低く抑えられる。しかし、派遣社員の場合、コーディネーターがいても最終的な管理は社内で行う必要がある。「たとえば、急病で派遣の一人が当日欠勤となったら、社内の人員を替わりに受付に就かせるケースもありますが、社員の給与から考えるとコスト高です。NOCのアウトソーシングでは、バックアップ人員も準備しているので、急な欠勤にも午後から別のスタッフが業務に入るといったことが可能です」

 また、受付業務に限らず総務・庶務やメール室運営でも、派遣社員が辞めた場合、社内の担当者が新しい派遣社員に一から教育をし直す必要があるが、アウトソーシングなら一度委託してしまえば、業務の引き継ぎや教育を新たに行う必要がなくなる。なぜなら、これらはアウトソーサー側の業務になるからだ。「トータルで考えれば、派遣に比べてアウトソーシングが割高ということはないと言えるでしょう」