メディアの「ソーシャル消費」が本格化してきた。

 これまで、書籍や音楽、映画、TV番組などは、友人の“お勧め”にしたがって消費することが多いとわかっていた。インターネット時代になって、ネット上で話題になっている映画がますます受けたり、ツイッターでリアルタイムにつぶやかれているTV番組に、多くの人々がチャンネルを合わせたりしていた。

 これをもっと進めようというのが、先だってフェイスブックの開発者会議「f8」で発表された新しい「オープングラフ」だ。

 オープングラフは、フェイスブックの友達が「今何をしているのか」を知ることができるというもの。友達が音楽を聞いているとか、テレビ番組を見ているとか、そうしたことが自動的に公開され、クリックすれば、音楽アプリや映像プレーヤーのアプリが開いて、友達が聞いているのと同じ音楽、見ているのと同じ番組を楽しめるようになる。

 友達が同時に参加できるような仕組みは、フェイスブック上に統合されているジンガのようなソーシャルゲームにはすでにあった。隣の農園よりも作物をたくさん収穫できるように、トラクターや肥料を買ったりして競うゲームだ。しかし、同様に音楽や映画を、まるでそこに一緒にいるかのようにして友達同士で共有する仕組みはなかった。今回はそれを実現しようというわけだ。

 フェイスブックは、音楽ストリーミングサービスのスポティファイ、映画やTV番組のストリーミングサービスを提供しているフールーやネットフリックス、あるいは名門新聞社のワシントンポストなどを新たな提携企業として発表しているが、今回のミソは、これらの企業が提供するアプリはフェイスブックの中だけで動くということだ。

 つまり、友達がリンクを送ってくれて、それをクリックすると、たとえばフールーのサイトに飛んでそこで映画を見る、というのではない。フールーが提供するアプリは、フェイスブックのサイトを出ずして、その中で動き、その中で映画を見ることになるのだ。友達がフールーで映画を見ているというのも、そのアプリ経由で知らされることになる(プライバシー設定で公開しない選択も可能)。

「リアルタイムでセレンディピティ(偶然の幸せな出会い)が起こるんだ」と、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグは説明したが、実はこれはメディア企業にとっては、カッと目を開いて洞察すべき変化である。