東京電力の経営状況などを調査する政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」が作成した報告書が10月3日、野田佳彦首相に提出された。福島第1原発事故の賠償金を確保するため、東電が10月中にまとめる特別事業計画の“たたき台”だ。だが、報告書は議論の余地を多く残し、賠償支援スキームは危うい状態にある。 

会社更生法は使いにくい東京電力<br />危うさが残る賠償支援スキーム第三者委員会「経営・財務調査委員会」が作成した報告書を野田佳彦首相に提出する委員長の下河辺和彦弁護士(右)
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「最低限、法律的に理屈が通らない話には銀行も応じられない」「結果的に、国民のなかには失望する気持ちがあるかもしれないが、委員会の立場を理解していただきたい」──。報告書を提出した後の記者会見では、「なぜ金融機関に債権放棄を求めないのか」などの質問が相次ぎ、委員長の下河辺和彦弁護士はこう答えた。

 原発事故の被害者への損害賠償を万全なものとするためなどの、原子力損害賠償支援機構を中心とした東京電力への賠償支援スキーム。それは、このたたき台を基に東電が機構とともに作成する特別事業計画を、枝野幸男経済産業大臣が認定して始まる。

 その認定のための条項に、金融機関など関係者への協力の要請という項目があり、具体案として債権放棄などの要請があるのか注目を集めたのだ。

 報告書では、今年3月末の東電は資産超過である(いざとなれば金融機関への債務を返済できるだけの資産がある)とされ、そういう状態であるのに債権放棄するのは、「法律的に理屈が通らない話」で、「銀行も応じられない」としたのだ。

 しかし、賠償額は初年度で1兆0246億円(2年度目以降で毎年8972億円)、一過性分の賠償額として2兆6184億円、さらに廃炉費用を1兆0817億円と推定した。

 これらを、純資産1兆6025億円(今年3月末)で穴埋めしようとすると、債務超過になる。実質的に経営破綻だ。

 資産超過か債務超過か。違いがあるのは、報告書が、賠償債務の支払い原資を機構が供給することを前提にしているためだ。しかし、それは計画が認可された後の状態を前提にしていることになり、おかしな話だ。報告書でも、この点は議論がありうるところと明記している。