週刊ダイヤモンド9月23日号の第三特集は「メガバンクの構造改革」。日本銀行のマイナス金利政策による本業不振や、業務の効率性を示す「経費率」の悪化など、収益環境が変化する中、メガバンクグループはそれぞれどの事業に投資して成長していくのか。三菱東京UFJ銀行におけるデジタル技術推進の現状について、常務執行役員の林尚見氏に語ってもらった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)

──他行に先駆けてフィンテック(金融とテクノロジーが融合した分野)のための外部組織「イノベーション・ラボ」をつくるなど、デジタル技術の活用に積極的です。

三菱東京UFJの常務が描く、銀行員のルーティンワークからの解放林 尚見・三菱東京UFJ銀行常務執行役員 Photo by Masato Kato

 こうしたデジタル事業は“多産多死”のため、まだ大きな成果は出ていません。むしろ、すぐに成果が出ることならば銀行本体でやっています。今すぐ何かを実らせようというわけではなく、ラボで温めた先端技術をある日突然爆発させて、一気に事業拡大するという方針です。

 ラボは時代の100歩先を行き、銀行本体は半歩から1歩先の技術を押さえておく。この役割分担がちょうどよいと考えています。

──今年10月には、IoT(モノのインターネット端末)技術開発のために、「ジャパン・デジタル・デザイン」という新しい外部組織を立ち上げ、地方銀行とも連携すると発表しました。この組織の狙いは何でしょうか。

 大きく分けて2つあります。まず、日本は東京に集中していると言われますが、地方には地方のビジネスモデルがあり、私たちが気付いていないような課題を解決するニーズも、地方に多数存在していると考えています。その解決策を、地銀の皆さまとノウハウを共有しながら見つけることが一つ目の目的です。