ハーバード大学のあるボストン近郊ケンブリッジのホテルで、このコラムを書いている。

 今回は、ハーバード大学アジアセンターの招聘計画で当地に一週間滞在し、エズラ・ボーゲルやジョセフ・ナイ、マイケル・サンデルなど、色々な教授や研究員と意見交換を行なうほか、このコラムがアップされる19日に「変化するグローバル・システムの中での米国、中国、日本」と題した講演を行なう。

 私は、テキストを読み上げるのはとても苦手なので、演説原稿を準備することはしないが、たぶん講演で話すことと、ここで述べることとは大きな違いはないように思う。

 先日、クリントン米国務長官も外交関係雑誌に、変化する世界と米国にとってのアジア太平洋の重要性について寄稿しているが、世界の構造変化にどう対応していくのかは知的社会でも最大の関心事である。

 私は、連載第1回で世界の構造変化の特徴を述べたが、今回のコラムにおいてはそれへの戦略的対応についての考え方を述べることとしたい。

中国を筆頭とする新興国の台頭に
グローバルな戦略的対応は必要ないか

 東西対立に対する戦略的対応は、ジョージ・ケナンがモスクワから国務省に宛てた長文の電報に盛られた「封じ込め政策」(Containment Policy)を基礎とした。

 米ソの核兵器の均衡を基礎としつつも、西側は結束しソ連の行動をチェックするとともに、世銀・IMF・ガット、あるいはOECDといった国際機関での経済面でのルール作り、G7を中心とする政治経済的協調を進め、冷戦に勝利し、今日の繁栄を築いた。

 近年の世界の構造変化は、中国を筆頭とした新興国の台頭によってもたらされているが、新興国の台頭もこのような西側システムに依拠している。

 とりわけ冷戦終了後、人、物、資本、技術が国境を越えて動き回るグローバリゼーションは、新興国の急速な経済成長を可能とした。同時に、中国などの開かれたマーケットの拡大から西側は裨益し、とりわけリーマン・ショックによる主要国での需要の落ち込みを中国が内需の拡大によりカバーしたわけであり、相互依存の拡大は西側を資することは間違いがない。