ルネサスと大和ハウスはなぜIoTを「効率化」に活用するのか

IoTの活用で「効率化」は重要なキーワードだ。前回は「顧客サービス強化」のためのIoT事例を紹介したが、今回はもう一つの「企業内部の効率化」の事例を取り上げる。(ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)

半導体ルネサスエレクトロニクス
1000の製造工程をIoTで効率化

 IoTの仕組みをうまく活用している企業を取材していると、「顧客満足の向上」と「自社の効率化」という2つの目的が見えてきた。前回の『「オーナー企業」こそIoTで新規事業に成功しやすい理由』は顧客満足の向上を叶えた事例をご紹介した。今回は「自社の効率化」の事例にスポットを当てたい。

 まずは、いま活況を迎えている半導体業界のメーカー、ルネサスエレクトロニクスをご紹介したい。

 2017年は中国の需要によって半導体メーカーには追い風が吹いている。というのも08年のリーマンショック後に中国の製造業が打撃を受け、公費で立て直しを図っていたのがようやく終わったからだ。そして、政府が掲げている中国製造2025の政策に基づき、中国の製造業は内製化を推し進めるため、国内工場に積極的に投資をしているのだ。

 工場の自動化が活発化すると、製造機械やロボットの用意が不可欠となるが、新たに機械を作るとなると2年はかかってしまう。そのため、中国メーカーは外国から中古の機械(レガシー品)を買い集めている。製造装置をラインに並べて製品を作る際に製品の心臓になるマイコン付き半導体を入れ込むわけだ。その時にルネサスを含む品質の高い日本の半導体メーカーの半導体に白羽の矢が立ったというわけだ。

 中国需要の勢いに乗る半導体業界の中で、ルネサスは自社工場に設備投資を行っている。15年夏に茨城県ひたちなか市にある那珂(なか)工場にIoTを導入したのだ。

 那珂工場は半導体生産の国内拠点であり、その製造工程はおよそ1000ステップもある。その工程の多さから、途中で機械に異常が見つかったら早い段階で見直しをする必要があった。そうでなければ失敗作を完成工程まで仕上げてしまうことになり、材料も無駄にしてしまう。