「需要」と「供給」が出会い調整される「市場」について正しく知ることは、経済を語るうえで不可欠です。しかし、なぜか少なくない日本人が、「市場」という言葉に嫌悪感をいだいたり、果ては、まっとうな経済学を「市場原理主義」と結びつけて批判したりしています。

経済学が今日本を取り巻く問題に対してどのような答えを出しているのかを紹介していく本連載。今回は「市場」について一番大切なポイントを解説します。市場経済の申し子である外資系金融機関で活躍する著者が語るのは、意外にも「市場の失敗」をふまえた経済学のクールな結論です。

市場が失敗するのは「4つの場合」しかない

 経済学は市場がすべてを解決するとはまったくいっていません。むしろ市場が失敗する状況をさまざまな角度から分析するのが、最近の経済学ではとても活発な研究分野のうちのひとつです。そういう意味では、経済学は「市場原理主義」とはまったく違うものです。

 さて、じつは市場が失敗するケースというのは次の4つの場合しかないことがわかっています。

①規模の経済と独占企業
②外部不経済
③公共財の提供
④情報の非対称性