日産の「無資格検査問題」が起こるべくして起きた意外な背景

謝罪する日産自動車部長ら。社長や役員ではない従業員に会見を任せたことは「危機意識の欠如」と非難された Photo:毎日新聞社/アフロ

日産自動車で無資格の社員が完成検査をしていた問題は、約116万台という大量リコールを出しただけでなく、同社の信頼とブランドイメージを損ないかねないほどの事態となった。そもそも完成検査とは何か、なぜ問題が発生したのか。根本的な理由や背景を探った。(ジャーナリスト 井元康一郎)

「好調ぶり」に水を差した事件
そもそも完成検査とは何か

 昨年秋に三菱自動車を傘下に入れ、今年9月にはロングレンジEVの新型「リーフ」を発売するなど、好調ぶりをアピールしていた日産自動車にとって、無資格者による完成検査の横行が発覚したことは、まさに好事魔多しと言うべき事件であった。

 9月29日に無資格者検査の事実を公表してから1週間後の6日には過去3年間に国内販売した38車種、106万台についてリコールの届け出を行うなど、早期の事態収拾を図っているが、「実態の把握と原因究明には1ヵ月ほどかかる」(日産自動車関係者)と、傷ついたブランドイメージの回復についてはまだ途上にある。

 完成検査とは、製造したクルマが公道を走る要件を満たしているかどうかのチェックで、いわば「0回目の車検」にあたる。スピードメーターの誤差は基準値以内か、ブレーキはちゃんと利くか、ライトの光軸は狂っていないか、警笛はちゃんと鳴るか等々、チェック項目も車検に準じたものだ。初めてクルマを登録するときに運輸支局にクルマを持ち込んで検査を受ける新規検査を、自動車メーカーが代行すると考えればわかりやすい。

 自動車メーカーは自社の製品について、エンジンや車体などの仕様が一定で、環境性能や保安基準などの要件を満たしているという認定、すなわち型式指定を国道交通省から受ける。