東芝の半導体子会社、東芝メモリを買収することになった日米韓連合の内部で、フラッシュメモリー首位の韓国サムスン電子を追撃するため、東芝メモリの投資を増額する構想が浮上している。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

東芝メモリ、サムスン追撃で日米韓連合内に「WD排除の論理」浮上東芝メモリの生産拠点の四日市工場の広大な敷地に第6棟の建設が進む。第7棟の建設構想も明らかにされた Photo by Reiji Murai

 東芝メモリの成毛康雄社長は13日、三重県四日市市で開いた記者会見で、東芝が単独で投資できる金額は、年間三千数百億円程度との見方を示したが、一方のサムスンの設備投資は年間1兆円規模にのぼるとみられ、投資競争で引き離され続けている。

 スマートフォンやデータセンター向けにフラッシュメモリーの需要が爆発的に拡大する市場で、設備投資に出遅れれば競争に敗れる。「ここでサムスンに対抗できなければ永久に立ち直れない」(東芝メモリ関係者)との危機感は強まる一方だ。

 こうした中、日米韓連合を率いる米投資ファンドのベインキャピタルの杉本勇次日本代表は、東芝メモリの買収資金の2兆円に加え、東芝メモリがIPO(株式上場)するまでの3年の期間を想定して、1兆円程度の投資資金を用意する構えを示す。

 もともと東芝は、協業相手の米ウエスタンデジタル(WD)と共同で四日市工場に投資してスケールメリットを発揮し、サムスンの巨額投資に対抗する提携を結んでいる。

 だが、WDは東芝メモリの第三者への売却差し止めを国際仲裁裁判所に申し立てて東芝と対立しており、本来の共同投資が進まない状況だ。

 東芝は8月に1950億円、10月にも1100億円の追加投資を単独で決めた。今後もWDが訴訟を取り下げない限り、WDの投資の参加を認めない方針で、共同投資は再開できるめどが立っていない。このため、WDに代わって日米韓連合が、四日市工場の共同投資に乗り出すのが構想の肝だ。

 日米韓連合がWDの投資を肩代わりすれば、東芝単独で三千数百億円にとどまる投資資金を年間6000億円規模に倍増させることが可能になる。