郊外の一戸建てからマンションへの住み替えを考えるシニア層が増えている。シニアならではの売却を中心に住み替えの注意点について、住宅評論家の櫻井幸雄さんに話を伺った。

資産価値は庭付き戸建て
→駅近マンション

住宅評論家 櫻井幸雄
さくらい・ゆきお/1954年生まれ。「週刊住宅情報」の記者を経て、99年に『確実な家を買え』を出版。以降、テレビ、ラジオに多数出演。年間200件以上の物件取材をこなす。近著に『不動産の法則―誰も言わなかった買い方、売り方の極意』(ダイヤモンド社)他、著書多数。

 20代の頃は賃貸暮らしでお金をためてマンションを購入、そのマンションが値上がりした売却益で郊外の庭付き一戸建てに買い替え。定年後は子どもや孫に囲まれて穏やかな余生を楽しむ……。そんな「住宅すごろく」の“夢”は、昭和の時代、多くの人たちに支持されました。

 そうした夢を抱いていた世代が、今まさに定年を迎えています。結果、どうだったでしょう。子どもたちは独立して都心でマンション暮らし。親子2世帯など幻想だったことを思い知らされます。加えて、広過ぎる間取りや、あるいは階段の急な狭小の3階建て住宅、車でなければ買い物や病院へも行けない郊外の立地など。

 60代の元気な今はまだよくとも、70歳、80歳と年齢を重ねていけば、いずれは「不便で住みにくい家」へと変貌していきます。

 自宅をバリアフリーにリフォームして「住みよく」するのも手ですが、当初「500万円くらい」と予算を組んでいても、あれもこれもと、結局1000万~1500万円もかかってしまう。そんなにお金をかけるなら、いっそうのこと家は売って、駅近の便利なマンションに引っ越したいと決断するわけです。