TPP交渉では、農業関係者を中心に反対意見が強い。しかし、農業に関して拡大するアジアなどの海外市場を念頭に置き、輸出拡大を志向していけば、メリットは享受できる。

 調べてみると、日本の農産物の輸出額はずっとわずかに留まってきた。過去10年間の農林水産の輸出金額の推移を見ると、2010年は農産物2417億円、農林水産合計でも4296億円(除くたばこ、真珠、アルコール飲料)である(図表1参照)。

 農業生産額に対する輸出割合は3%弱でしかない。日本の食品産業にしても、他の製造業に比べて輸出比率は極端に少ない。

農業は「輸出増」のメリットをもっと追求すべき<br />――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

 目下、日本の農業は、2018年に輸出額1兆円という目標を立てていて、何とか輸出を増やそうと努力していることも確かだ。筆者も、日本の農産物の品質・安全性は世界に誇れるものだと信じているから、1兆円の目標は達成できると期待したい。

 しかし、最近、政治の舞台では、農業を中心にTPP反対に気炎を上げていていることが目に付く。TPP反対ほどの熱意を輸出振興に傾けているのだろうか。

 ところで、輸出分野は、家賃・地代と並んで、消費税が免除される代表的な品目である。海外向けに日本製品を輸出したときには、海外の消費者は5%の消費税を支払わなくてもよい。