元会長の巨額借金が発覚<br />改革拒む大王製紙の行く末意高氏1人に責任押し付け“トカゲの尻尾切り”との観測も
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 大王製紙の元会長で創業者の孫に当たる井川意高氏による使途不明貸付問題で先月28日、特別調査委員会から報告書が発表された。

 意高氏が連結子会社7社から無担保、しかも電話一本で借りた総額は106億円あまり。うち約59億円は未返済のままだ。使途解明に向けて大王側は、刑事告訴・告発に踏み切る予定だ。

 委員会は異常な事件が起きた要因を二つ、結論づけた。

 まず、実父の高雄氏と実弟の高博氏を含む井川父子は、資産管理会社を通じグループの株式の大半を保有、長期間にわたり経営と人事権を完全に掌握してきたことだ。

 そのため、創業家に“絶対服従”する風土があり、意高氏に異を唱える人間などいなかったことが巨額の貸付を許したとしている。

 事態の発覚が遅れた背景には、グループの資本関係の不透明さがある。上場企業の情報開示基準では、筆頭株主の資産管理会社までしか公開義務はないため、一族の資産状況は藪の中だったのだ。

 事態を重く見た委員会は、井川家の支配権を薄め、企業統治が機能するよう改革を求めた。これに対して現経営陣は、高雄氏や高博氏などの解任を求め(高博氏は応じず)、「けじめをつけた」(佐光正義社長)とする。

 ただ、今後も経営に関してアドバイスをもらうなど「井川家と決別する気はない」というし、井川家も株を手放すとは想像しがたい。

 しかし捜査のメスが入って事の真相が明らかになれば、意高氏は失脚するだろう。高雄氏は御年74歳で将来に不安が残る。

 製紙業界の経営環境は厳しい。大王は本気で新たなリーダーを選ばなければ生き残りは難しい。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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