ミンツバークの義理の息子・レニール氏と
過ごした有意義な2日間に考えたこと

 先日、フィル・レニール氏にお目にかかり、2日間一緒に過ごす機会を得た。

 フィル・レニール氏の名前を知る人は、まだ多くはないだろう。この40代前半のカナダ人男性は、世界でもユニークなビジネスコンサルティング会社「コーチングアワセルヴス」の創始者であり、かのヘンリー・ミンツバーグの義理の息子である。

 ヘンリー・ミンツバーグは、日本ではまだあまり知られていないものの、アメリカではマイケル・ポーターなどと並び称される著名な経営学者である。現在は、カナダのマギル大学経営学大学院の教授で、著書に『マネージャーの仕事』『MBAが会社を滅ぼす』『戦略サファリ』などがあり、翻訳書も出版されている。

 ミンツバーグの経営論のもっとも特徴的な点は、理論や分析を偏重するマネジメントを批判し、「実践」を重要視する点だ。現場で培われた経験、直観などを重要視し、いわゆるMBA的エグゼクティブによる、意思決定をトップダウンで遂行させるやり方を強く批判している。

 ゆえに、経営学の中では異端児扱いされることが多いが、その影響力は大きい。米国の経営学の教科書には、必ず彼の業績が紹介されていることからもそれがわかる。

 レニール氏は、自身がエンジニアとしてITバブルの頃の米国企業に入社し、その後ミドルマネージャーになった。だが、折悪しくその頃にバブルがはじけ、会社は別の株主に売り渡された。

 新株主は徹底的なコストカットを行なったため、優秀だった同僚たちが冷遇されたあげく、辞めていくのを彼は何度も見る羽目になった。

 むろん、自分も含めて残っている同僚たちの不満も爆発寸前で、景気の良かったときはあれほど楽しかった職場が、まさに「超・不機嫌な職場」になってしまった。鬱になる者や生きる希望をなくしかける者までいた。

 彼自身も、新しい株主が送り込んだ上司から高圧的にコストカットを要請されるなどのストレスに苦しみ、同じように不満を抱えていた。

 そんな折に思い出したのは、彼の母の再婚相手が経営学者ということだ。母が晩年になってからの再婚だったし、レニール氏もすでに自身の家庭を持っていたこともあって、彼自身は母の再婚にはあまり口出しせず、再婚相手とは何度か会話した程度であった。