ザッパラス、enishを経営者として率い、東証一部上場企業にまで成長させた杉山全功さん。「上場請負人」として知られる杉山さんは、ご自身のことを「1から90」に会社を成長させる経営者と捉えているそうです。ザッパラスやenishでのエピソード、上場請負人としての考えのほか、時に「?」という質問も投げかけられる株主とのうまい付き合い方などを伺っていきます。聞き手は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアン共同代表で、元ミクシィ社長としても知られる朝倉祐介さんです。(ライター:石村研二)

マーケットの可能性を感じたenishとの出会い

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):ザッパラスは2005年にマザーズ、2009年に東証一部に上場していますが、杉山さんは翌年に辞められていますね。そしてその翌年の2011年に当時のSynphonie、今のenishに参画なさったんですよね。こちらはどのような経緯だったんですか?

ゲーム会社はゲームのことがわからなくても経営できる<br />【杉山全功さんに聞く Vol.2】杉山全功(すぎやま まさのり)大学時代に学生ベンチャー、株式会社リョーマに参画したことが経営者へのきっかけとなる。2004年に代表取締役に就任した株式会社ザッパラスは就任2年目で東証マザーズに上場し、2010年には東証一部上場へと導く。同社退任後、2011年に株式会社enishの代表取締役に就任。就任後2年半で自身二度目となる東証一部への上場を果たす。株式会社enish退任後は、株式会社日活、地盤ネットHD株式会社等の社外取締役を務めるかたわら、最近はエンジェルとして若手経営者の育成にも力を入れている。

杉山全功氏(以下、杉山):ザッパラスを辞めて次は何をしようかと考えていた時に、ドリコムの内藤さん等の経営者の方々とゴルフをする機会があって、その時に内藤さんから「ソーシャルゲームって知ってますか?」って言われたんです。当時はまだガラケーを使っていたので、スマホのこともソーシャルゲームのことも「聞いたことがある」といった程度だったんですが、この時のゴルフがきっかけで興味を持つようになりました。いろいろと情報を仕入れてみると、マーケットとして可能性がある、と思うようになったんですね。

 その頃のソーシャルゲームの業界は、エンジニアとクリエイターが数名で開発するような小さな会社が100社とか200社とかあるような状態だったんですが、その中の何社かでまとまって経営したほうがいいんじゃないかと考える人たちが出てきました。その中の1社がSynphonieで、声をかけてもらったという形ですね。

朝倉:Synphonie側としては、どういう思惑で杉山さんに声をかけたんでしょうか?

杉山:その頃の彼らは、いくつかスマッシュヒット作を作っていて社員は20人くらいという状態でした。月によって赤字だったり黒字だったりするような感じだったんですが、「今のタイミングはゲームづくりに専念したほうがいい。自分たちだけではマネジメントに手がまわらないので、その部分をやってもらえませんか?」という話しになったんです。「ゲームを作るためには、もっと人もお金もいるから組織を作らなければいけないし、調達もしなきゃいけないし、上場もしたい。将来的には自分たちで経営もやりたいけれど、今は外から力を借りたい」ということでした。

朝倉:最初から経営者という役割を求められている、というのが前提だったんですね。ザッパラス社の占いもそうですが、主たる事業であるゲームについて、そのサービス内容を熟知なさっていたわけではなかったんですよね? 不安はなかったんですか?

杉山:不思議となかったです。ゲームの中身や良し悪しは分からないけど、ゲームビジネスの構造は他のコンテンツビジネスと同様だと理解したので。念のため「ゲームのことはわからないけどいいかな?」と聞いたら、「ゲームづくりについては期待してないから大丈夫です!」って言われてましたからね(笑)。冷静というか合理的な考え方がすごくエンジニア的で、でも思い切りもあって、だからこの連中ならゲーム作りは任せて大丈夫だろうなと信頼できたのです。

 経営者として、結果の指標についてはその理由と解決策を問いただしたり、フィードバックしたりすることもありますが、その過程について細かくは問いません。そうした信頼関係が築けるチームだからこそできたことだと思います。