大阪府知事・市長のダブル選挙が熱い。もちろん、橋下徹前大阪府知事が辞めて市長選挙に立候補して、再選を目指す平松邦夫氏との一騎打ちというのは、選挙として面白い。ただし、私は東京の住民なので、大阪ダブル選挙の選挙権はない。もっと興味があるのは、ダブル選挙が今後の地方分権を占う試金石だからだ。

橋本氏と平松氏
両者の主張の違いは何か

 橋下氏は大阪「都」構想を掲げている。一方、平松氏は大阪市を中核とする広域行政をすると主張している。両者ともに、大阪府と大阪市の二重行政の無駄を省き、将来は道州制(関西州)を目指すといっている。

 ちょっと聞いただけでは、橋下氏対平松氏は同じ目標のために手段が違っているだけで、あまり大差ないように見えるだろう。マスコミでは、こうした政策論の差異を説明するより、選挙戦中での「おもしろ言動」だけを捉えがちなの残念だ。どちらが最終目標にはやく達するかをみれば、政策の違いがわかる。

 人口1000万人以上の地域で広域行政を行う場合、二つの方法がある。一つの財政単位の自治体を作るやり方と、財政単位はバラバラの自治体が広域連合を組んで行うものだ。たとえていえば、前者は各州があってその上に連邦政府が乗っかる米国のような合衆国、後者はEUのような国家が連合するタイプだ。橋下氏の手法は新たな制度(大阪都構想)作りによる米国型で、平松氏の手法は現在の制度の枠内を利用するEU型対応といえよう。

 米国型は財政単位がまとまっているために、各自治体の利害対立があっても決定は早い。その一方で、各自治体への住民参加の道を確保しなければいけない。その点、今の行政区を特別区にして、区長は現在の市役所からの派遣でなく、区長公選制を橋下氏は打ち出している。

 EU型は今のヨーロッパ経済危機への対応でもわかるが、各自治体の利害調整で意思決定が遅れる。EUは各国の歴史事情もあって、現状では致し方ないところである。将来、財政統合という構想だが、過渡期的に通貨統合を行うことのリスクがある。つまり、このままユーロは崩壊してしまう可能性はかなりある。