「毎シーズンAクラス(3位以上)に入れるチームを作ることができた要因は何ですか?」

 そう問われた時、私が唯一はっきりと答えられるのは「選手時代に下積みを経験し、なおかつトップに立ったこともあるから」ということである。

 日本のプロ野球界では、いわゆる「野球エリート」と呼ばれる人が監督になるケースが多い。長嶋茂雄さんや王貞治さんに代表されるように、高校・大学時代から豊かな将来性を嘱望され、注目された中でプロ入りすると、期待に違わぬ活躍を見せてスターとなる。現役を退く際にも「近い将来には監督に」という期待を寄せられ、ほどなく監督に就任するという野球人生だ。

 このタイプの監督は、ドラフト1位など高い評価で獲得した選手をしっかりとレギュラーに仕上げていく。時にはポジションを空けてレギュラーに据え、一軍で実戦を経験させながら一人前にしていく。

 ただ、その一方ではドラフト下位で入団してくるような無名の選手を育てるのが得意ではない。無理もない。自分自身が潜在能力に恵まれ、順風満帆な野球人生を過ごしてきたゆえ、“できない人の気持ち”が理解できないのだ。