台頭する新興国と、守りに入る覇権国がいつしか戦争に突入する力学「トゥキディデスの罠」を、過去500年の事例から分析し、現代の米中関係への示唆を提示した、アメリカ2017年上半期のベストセラー歴史書『米中戦争前夜 新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』。著者のグレアム・アリソン教授はハーバード大学ケネディ行政大学院の初代学長で、政治学の名著『決定の本質』(日経BP社)の著者として知られ、しかもレーガン~オバマ政権の歴代国防長官の顧問を務めた実務家でもあります。本書で壮大な歴史から紐解かれた、米中両国が戦争を避けるための12のヒントをダイジェストで紹介します。

グレアム・アリソンハーバード大学教授が考える、米中両国が新旧戦争を避けるための12のヒント新旧大国が戦争を避けるために有効なヒントとは?

 トゥキディデスの罠から逃れることは、現実的に可能だ。過去500年を見ると、新興国と覇権国が見事な舵取りをした結果、戦争にいたらず危機を乗り切ったケースが、少なくとも次のとおり4件ある。

・スペインVS.ポルトガル(15世紀末)
・ドイツVS.イギリスとフランス(1990年代~現在)
・アメリカVS.イギリス(20世紀初め)
・ソ連VS.アメリカ(1940~80年代)

 この4つのケースから、米中関係が戦争に陥らないためのヒントとして導き出されたのが次の12項目だ。

ヒント1:国際機関や法的枠組みなど高い権威をもつ存在を掲げる。

ヒント2:国家より大きな経済・政治・安全保障の機構に組み込む。

ヒント3:現実的な判断を下せる賢い国家指導者を擁する。

ヒント4:絶好のタイミングを逃さない。

ヒント5:文化的な共通点を見出す。

ヒント6:核兵器による戦争のあり方が変わったと知る。

ヒント7:相互確証破壊(MAD)により超大国は運命共同体である。

ヒント8:核戦争は現実的な選択肢でないと理解する。

ヒント9:それでも核超大国は、勝てない戦争をする覚悟をもつ。

ヒント10:各国間で経済的なつながりを強化する。

ヒント11:同盟がもたらすリスクに注意する。

ヒント12:国内情勢の安定化に注力する。

 私たちはこれらのヒントを得て、どこに向かうのだろうか。

 4000年の歴史をもつ人口14億人の文明の復活に、「解決策」は存在しない。それは、これらヒントを駆使して今後一世代にわたり管理すべき「長期的課題」なのである。

★戦争に陥らなかった4件の対立や、12のヒントの詳細な分析については、新刊『米中戦争前夜 新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』をご覧ください。