英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週もオリンパス問題です。第三者委員会による報告が発表され、株主と英語メディアはまず、暴力団の関与は認められなかったという結論に大いに注目。続いて、これまでの経営陣が「腐っていた」という強い表現を「おおお」と言わんばかりに繰り返しました。欧米でも有名な日本企業が「腐っていた」と言われた後、果たして再生するのか。英語メディアが注目するのはもはやオリンパス一社を超えて、日本企業そのものです。日本企業を代表する存在として、オリンパスがまともな会社に生まれ変わるのかが注目されているのです。(gooニュース 加藤祐子)

「反社会的勢力の関与認められず」に注目

 オリンパスの損失隠し問題を調査していた第三者委員会(甲斐中辰夫委員長)が6日、調査報告書を同社に提出し、公表しました。日本の主要メディア各社が詳報していますので、詳しい内容はそちらや報告書そのものをご覧ください。ここではいつものように、英語メディアの反応を追います。

 発表の記者会見は6日午後に行われましたが、株主に懸念されていた暴力団との関与については証拠がないと発表するらしいと、事前にロイター通信などが配信。これを受けて英紙『フィナンシャル・タイムズ』が「オリンパス株上昇続ける」「上場廃止は避けられそうだという見通しを好感」と記事を掲載していました。

 そして第三者委員会の発表が始まるや、報告要約版の14ページにもある「反社会的勢力の関与は認められなかった」という部分に各社が注目。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の日本ブログが「オリンパス報告、ヤクザ(Yakuza)関与の兆候なし」と速報し、ロイター通信も「暴力団との関与なし」と速報しました(ロイター記事は見出しがクルクル更新されているので、そのままではありません)。

 犯罪組織との関与については、オリンパス取締役会に解任されたマイケル・ウッドフォード元社長が身の危険を感じているという趣旨の発言をしていたこともあり、これまでにロイター通信『フィナンシャル・タイムズ』などが関与の可能性もあるのではないかと言及していました。具体的な証拠は何もないが、と付け加えながら。それに加えて11月11日には米誌『アトランティック』のウエブメディア『The Atlantic Wire』でジェイク・エーデルスタイン記者(元読売新聞警視庁担当、暴力団取材で有名)が、オリンパスの一連の取引に犯罪組織が関与していないか警視庁捜査二課、金融庁、東京地検が調べているという記事を掲載。さらに11月18日には米紙『ニューヨーク・タイムズ』のヒロコ・タブチ記者が「捜査当局がオリンパスと暴力団の関与を調べている、捜査資料を入手した」として記事化。『ニューヨーク・タイムズ』記事を受けて、ただでさえ暴落していたオリンパスの株価はさらに急落しました。対してそもそもオリンパス問題をスクープした雑誌『FACTA』の阿部重夫編集長はブログで、自分たちが把握しているオリンパス問題の人脈図に「組織犯罪(ヤクザ組織)は直接登場しません」と反論。11月21日には産経新聞も「買収資金、群がる金融ブローカー 反社会勢力に流出か」と書きましたが、11月25日の記者会見でウッドフォード氏は「関与を示す証拠はなにもない」と繰り返していました。

 要するにこの「暴力団関与」については、色々な憶測や報道や発言が飛び交っていて、オリンパスが上場を続けられるかのポイントでもあっただけに、英語メディアはここに大注目していたというわけです。

 ちなみに第三者委報告のこの点についてエーデルスタイン記者は、捜査関係者が「なぜ関与は認められないと断言できるのか」と疑問を呈していたと『The Atlantic Wire』で反論。『ニューヨーク・タイムズ』も、「組織犯罪との関連がないという結論も予備的なものに過ぎない。日本当局の捜査に近い関係者2人によると、日本の警察は今でも暴力団との関連を示す証拠を追及する捜査を続けている」と書いています。

 (余談です。この件を取材しているわけではありませんが、日本のほとんどの新聞記者がそうであるように私もかつて何年か警察取材を経験しました。その上での一般論ですが、今回のような事案で捜査当局が暴力団との関連性を探るのは当然のことで、立件できるかどうかはまた別の話です。さらに日本の新聞の事件記者の場合、立件前の捜査内容を記事にするかどうかは、色々な条件で決まります。入手した捜査情報の確度が重要なのはもちろんですが、その他にも報道先行による証拠隠滅の恐れはないか、あるいは無実だった場合の影響はどうか、実際の立件にどれだけ近いかなど、複合的に判断するものです。その辺の見通しがこの件ではどうなのか、興味のあるところです)

芯まで腐っていたと英訳され

 話を第三者委の報告内容に戻します。続いて英語メディアが注目したのは第三者委報告の「経営中心部分が腐っており」というくだりでした。これをブルームバーグ通信英BBCAP通信『フィナンシャル・タイムズ』など複数メディアが「rotten to the core」と翻訳し、この表現がネットやテレビニュースを飛び交いました。

 ちなみにこの「rotten to the core」というのは慣用句でもあり、これを素直に日本語にするならば「芯まで腐っている」というかなり強い表現になります。「中心部分が腐っている」→「rotten to the core」→「芯まで腐っている」と、翻訳というフィルターを挟むと(どこにも誤訳はないのですが)少しずつニュアンスが変わってくるという一例でもあります(ちなみにオリンパス社が「参考までに」と発表した英語版では、「the core of management was corrupted」(p23)という表現になっていました)。

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