「子どもに英語をマスターしてほしい!」――そんな願いを持っている親御さんは少なくないだろう。しかし、そんな人でも「英語がペラペラになればそれでいい」などとは思っていないはず……。むしろ、本当にわが子に身につけてほしいのは、世界のどこでも生きていける頭のよさ、つまり「本物の知性」なのではないだろうか。
実際、応用言語学や脳科学、教育心理学などのアカデミックな研究では「外国語学習の機会が、子どもの知力やIQを高める」といった知見が蓄積されつつあるという。
いま、こうした科学的根拠(エビデンス)に基づいた指導によって、子どもたちの英語力を着実に伸ばし、人気を集めている英語塾があるのをご存知だろうか。元イェール大学助教授の斉藤淳氏が代表をつとめるJ PREPだ。
本連載では、同氏の最新刊『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!』から、一部抜粋して「ほんとうに頭がいい子」を育てるための英語学習メソッドを紹介する。

世界で活躍するのに、バイリンガルである必要はない

そもそも臨界期というのは「母語習得」に関する学術仮説であり、外国語習得の限界時期には当てはまりません。しかし、こう説明すると、「いや、わが家は日本語も英語もネイティブ並みのバイリンガルに育てたいので、やっぱり幼稚園のうちから英語教育を受けさせたいです……」とおっしゃる親御さんがいます。

ここにも誤解があるように思います。もし、お母さん・お父さんが「子どもには将来的に海外でも活躍してほしい」と思っているのであれば、「完璧なバイリンガル」に育てる必要はありません

2つの言葉を完璧に使いこなせることが、即「海外でも活躍できる人材」の必要十分条件かといえば、決してそんなことはないでしょう。SLAのバイリンガル研究では、2言語を同程度に操れるバイリンガル(Balanced Bilingualism)はほとんど存在しないという認識が一般的ですし、2つの語学力にそれなりに差があったとしても、本人が社会生活で困らないのであれば問題ないとする考え方もあります(Baker, 2011)。

モノリンガル(単言語話者)とバイリンガルの区別は、白か黒かのように明瞭ではなく、無数の中間色があるグラデーションになっています。そもそも「言語をマスターする」というのは、非常につかみどころのない概念なのです。みなさんは、日本語を完璧にマスターしているでしょうか?

たとえば、現在の僕が「漢字書き取りテスト」をやれば、おそらく高校生には負けてしまうでしょう。手書きの習慣がなくなって以来、漢字がめっきり書けなくなったからです。かといって、僕が日本語を習得していないかというと、それを疑う人はまずいないと思います。