売り上げ伸びた
“銀聯カード”で決済できる店

訪日中国人が握る、日本のフィンテック普及のカギ

 銀聯(ぎんれん)カードをご存じだろうか。銀聯とは、日本語で言えば「銀行協会」という意味に近い。中国人が持っている銀行カードで、なんと約60億枚も発行されており、銀行口座の数だけ発行される仕組みだ。中国の人口が約14億人なので、一人当たり4枚持っている、つまり4つの銀行に口座を持っている計算になる(人口とはもちろん、幼児なども入れた数なので、実際の保有銀行口座はこれよりも多くなるだろう)。

 ひところ“爆買い”で有名になった中国からの訪日客も、政治情勢とは裏腹に、非常に増加中だ。2014年241万人(前年対比+83%)、15年499万人(+108%)、16年637万人(+28%)、10月までのデータで今年の人数を予想すると、750万人(+13%)となる。2014年と今年の訪日客数を比べると5年で3倍にもなっている。

 “爆買い”当時ほどではないにせよ、彼らの購買力にはすさまじいものがある。来日客であろうが、日本人であろうが、売り上げが増えれば商売にとっては望ましいことだ。中国人訪日客に人気のモデル観光コースに「銀座」がある。バスでホテルから向かって銀座1丁目で降ろし、銀座通りを歩き、ブランドショップやデパート、家電店で買い物をして8丁目に向かい、高速下の焼き肉屋(食べ放題)に行って、バスが迎えに来るというコースである。多いときにはバスが4丁目の交差点近くまでバスが並ぶ。

 彼らが商品を買うときの決済に使うのが銀聯カードだ。店舗での導入には機械の購入などコストがかかるものの、判断は売り上げ次第である。三越も銀座店にはいち早く、日本橋本店よりも先に導入した。中国人の購買に対応するためだ。当然、銀聯カードで決済できる店舗の方が、売り上げは伸びた。

 中国本土での個人決済状況を見てみると、電子マネーの一種であるアリババのアリペイ(支付宝)とテンセントのウィーチャットペイ(微信支付)が、個人の決済のほとんどに対応しているといっても過言ではない。それぞれに約5億人と約7億人の会員がおり、決済はスマートフォン(スマホ)で行われる。そのため、なんと財布を持たない中国人も増えている。元々は、アリババは電子商取引の会社で、テンセントはオンラインゲームの会社であった。