「まさか」が「現実」になる時代――。しかしそれは本当に、突然、起きた出来事なのでしょうか?
よく目を凝らしてみれば、予兆はすでに現れていたはずです。そして、「歴史は繰り返す」というように、人間の本質、集団心理には時代を超えるものがあります。今、激動の時代だからこそ、時代を超える普遍の著作をひも解く意義があるのではないでしょうか。50近くに上るドラッカー著作のうち、すでに絶版となってしまった初期の“記念碑的作品”8タイトルを、電子書籍限定で復刊します。

人間に対する深い洞察――
そこから浮かび上がる普遍の真理

ドラッカー幻の絶版タイトル、電子限定で復刊ピーター. F. ドラッカー
(Peter F. Drucker)
没後10年を超えたにもかかわらず、世界中から注目され続ける「知の巨人」「マネジメントの父」。「もしドラ」の題材となった『マネジメント』、IT起業家のバイブルとなった『ネクスト・ソサエティ』など、その著作は生涯で50冊以上にのぼる。
詳しくは、
ドラッカー日本公式サイト http://drucker.diamond.co.jp/

復刻される初期の“記念碑的作品”8タイトルは、テーマが多岐にわたります。

これまでドラッカーは、とりわけ日本では「マネジメントの父」として知られてきましたが、本来は19世紀~20世紀ウィーンの知の最先端で教養を積んだ、マスターともいえる存在でした。

政治・社会・経済はもちろん、哲学や芸術まで、およそ人間のなしえたことに広く精通していたからこそ、歴史を俯瞰し、先を読むことができたのでしょう。

実際に、まだナチスが一政治団体だったころ、その危険性についていち早く警鐘を鳴らしていました。しかもそれは単に一集団の暴走ではなく、一般大衆が無意識に看過していたという背景までも……。そうでなければ、ナチスといえど力を持ち得なかったというのです。いまこの時代に、ポピュリズムと呼ばれているものの形成の過程を、ドラッカーの著作から窺い知ることができます。

年金問題については、なんと半世紀近く前に指摘していました(しかも日本に対する警告もなされていたのです)。日本がバブル景気を迎える前、だれもが右肩上がりを疑っていなかった頃の話です。

しかも、90歳代にしてなお現役で、IT社会の行方を論じていたのです(2002年の『ネクストソサエティ』は、渋谷ビットバレーの起業家がこぞって読んだバイブルでした)。

移ろいゆく現実と、普遍の真理。その両方をつないでくれるのがドラッカーの著作なのです。

時空を超えた著作を改めて読み直すことで、いつもとは違う脳が刺激され、いまこの時代を大局を捉えなおすヒントが得られるかもしれません。

以下、原著の刊行順に8タイトルの概要をご紹介しましょう。

1.新しい社会と新しい経営(原題The New Society,1950)
1950年、第二次世界大戦終結後まもなくして書かれた本書では、資本主義と社会主義を超える新しい社会についての構想を示す。とりわけ働く者にマネジメントの責任をもたせるプラント・コミュニティの理念を追求した。「革新者」(イノベータ―)に着目したのもこの本。

2.変貌する産業社会(原題Landmarks of Tomorrow,1957)
近代合理主義からポストモダンへ――歴史の転換点のひとつが、世界観の変化である。今日のポストモダン・ブームの半世紀前、1959年にいち早く刊行された先駆けの書。

3.明日のための思想(原題Selected Essays/Gedanken fur die Zunkunft,1959)
「ヨーロッパが発展するためには、アメリカの今を理解しなければならない」。世界大戦後の米国の躍進とその影響を欧州視点で読み解いた論文集。原著はドイツ語

4.見えざる革命(原題Unseen Revolution,1976, 新版The Pension Fund Revolution,1996)
年金ファンド、積み立て不足、運用の失敗、問題化する公務員年金――来る高齢化社会が及ぼす問題を予見した今なお必読の古典。1970年代に人口構造の激変とその影響を指摘、ドラッカーの慧眼ぶりを示す作。

5.状況への挑戦(原題Management Case Book,1977)
企業や公的機関の事例を挙げた、ドラッカー初のケーススタディ集。2013年発行『決断の条件』(50ケース)のオリジナルバージョン。マネジメント思考を鍛える格好の材料

6.乱気流時代の経営(原題Managing in Turbulent Times,1980)
急速に進展するグローバル経済――その構造変化の本質はいったい何か。変化の脅威を機会ととらえ、マネジメントに組み込んでいく、今こそ読み返したい一冊。

7.最後の四重奏(原題The Last of All Possible World,1982)
ドラッカーが73歳にして初めて書いた小説。1906年、貴族、芸術家、職人が生きた最後の時代が過ぎ去ろうとしていた……ヨーロッパが輝いていた19世紀を惜しむかのように。

8.未来企業(原題Managing for the Future,1992)
ポストビジネス社会、企業はいかに意思決定を下すべきか。政府も企業も「なじみの現実」をもとに政策を定めてはならない。世界としての経済と経済学、人、マネジメント、組織……企業の内外の問題を論じ、取るべき行動を説く。

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明日からはドラッカーの功績を振り返るとともに、過去にダイヤモンド・オンラインに掲載されたドラッカー関連記事のうち、PVベスト5を順次紹介します。

<明日はドラッカー人気記事ベスト5、第5位を発表!>