地球環境問題が深刻化していることに加え、東日本大震災の影響を受け、企業活動を取り巻く社会の制約条件が大きく変化してきている。変化を先読みし、次なる一手を打つにはどうしたらいいのか。環境問題の限界点から逆算して、新たなライフスタイルを見つけていく手法を、東北大学大学院環境科学研究科の石田秀輝教授に聞いた。

東北大学大学院環境科学研究科
石田秀輝教授
1953年、岡山県生まれ。名古屋工業大学卒。工学博士。78年伊奈製陶株式会社(のちにINAX、現LIXIL)に入社。25年間、主に研究開発を担当し、同社取締役CTOを経て、2004年より現職。専門は地質・鉱物学を軸とした材料科学。同年から「ネイチャー・テクノロジー」を提唱、研究開発を進め、国内外でものづくりのパラダイムシフトを推し進めている。

環境問題が危機的になる
2030年が既視化

 いまだ長い復興の途にある東北各地。東日本大震災がもたらしたものは、人命と建物などへの直接的な被害に加え、エネルギー(電気・ガス・ガソリン・灯油)の供給停止、インフラ(通信・公共交通機関・交通網・上下水道)の寸断、食料の生産場の壊滅だった。食料に関しては日本の漁業の13%、農業の16%を賄う第一次産業の拠点が大打撃を受けた。

「このことは、2030年頃に私たちが向き合わねばならない地球環境問題の危機が、突如、現実になったことを意味します。大震災は、私たちの暮らし方やものづくりの価値をあらためて問うたのです」と石田教授。

 30年頃に訪れる危機というのは、環境問題の7つのリスク(エネルギー、生物多様性、水、気候変動、人口、食料、資源)が、この頃、限界に達すると予測されることを指す。すでにIEA(国際エネルギー機関)はピークオイル(石油産出のピーク期)が06年に過ぎていることを認めており、そのほかの各分野の専門家たちも、30年問題への警告の度を高めてきている。

「そもそも地球環境問題とは、際限のない人間活動の肥大化がもたらしたリスクであり、このままでは30年頃にわれわれは文明崩壊の引き金を引きかねない。そうなる前に考えねばならないのが、際限のない人間活動をいかに縮小できるか、ということ。それはまさに、今回の大震災の試練を乗り越える術に直結しているのです」