小康状態か、それとも混乱か――。
金総書記の死去で変わるパワーバランス

 12月19日、突然、北朝鮮の金正日総書記の死去が発表され、28歳と若い金正恩氏が後継者として指名された。

 北朝鮮は、米国、中国、ロシアの3つのスーパーパワーがぶつかり合う朝鮮半島に位置し、それぞれのパワーが微妙な均衡を保っている、地政学的に極めて重要なポジションだ。

 今まで北朝鮮は、独裁者の下でそれらのスーパーパワーを受け止めて、瀬戸際外交の手腕などを駆使して命脈を保ってきた。その独裁者が死去した。今後、スーパーパワー同士の微妙なパワーバランスが崩れることも考えられる。影響を過小評価することは適切ではない。

 独裁者である金総書記の死去は、以前から取り沙汰されていた。その意味では、日米韓、中国やロシアなどの関係諸国では、相応の対応策が検討されていたはずだ。しかし、以前から検討されていたからと言って、北朝鮮を巡る諸問題の今後の行方には読めない部分が多い。

 重要な問題は2つある。1つは、北朝鮮国内が混乱に陥る懸念だ。北朝鮮国内では食料品が極端に不足するなど、国民の間にかなり不満が高まっているはずだ。そうした状況下、若い世襲の3代目が、円滑に新しいリーダーとして権力を上手く継承できるか否か、そこには疑問がある。

 権力移行がスムーズには進まないと、北朝鮮国内が混乱して、多くの難民がわが国をはじめ、韓国や中国などに押し寄せることも考えられる。

 もう1つは、北朝鮮が近隣諸国に対して無謀な挑発行為に走る懸念だ。金正恩が権力のスムーズな継承に失敗した場合、国民の目を海外に向けさせるために、海外諸国に対して武力による挑発行為を行なう可能性は否定できない。

 あるいは、若いリーダーの掌握能力が十分でないため、軍部が自己の存在感をアピールするために暴走することも考えられる。

 当面、北朝鮮全体は故金総書記の喪に服すると見られ、不測の事態がすぐに発生するとは考えにくい。しかし、北朝鮮国内の権力移行の成否によっては、予想外の事態が発生する可能性がある。