有力国のトップが変わる2012年
経済格差、失業など共通する国内事情

 今年は、米国、ロシア、フランス、韓国などで大統領選挙があり、中国の国家主席も交代することになっている。

 有力国のトップがこれほど一斉に国民の審判を受ける年はかつてなかった。

 ひょっとするとその予兆が、昨年のエジプト、リビアでの独裁体制の崩壊や年内の北朝鮮のトップ交代だったのかもしれない。

 各国の大統領選挙はもちろん国内事情に左右される。だが、その主たる国内事情がコピーをしたように共通しているのだ。

 それは経済格差、失業、増税、緊縮政策に対する一般市民の強い反発である。そして、その矛先は大手金融機関をはじめグローバル企業や、その活躍の場を提供している学者や官僚などテクノクラートに向かいつつある。さらに、昨年来その流れに漫然と乗っている政府や政党、政治家に一段と厳しく迫っている。

破滅的危機を回避するための警告
「グローバル経済を檻に入れろ」

 私は1997年のアジア経済危機以来、「野放しのグローバル経済を檻に入れろ」と警告してきた。

 暴力的に動く短期資金、複雑怪奇な金融商品、為替相場の急激で大幅な変動、そして安易な国債の発行と引き受けなど、この危ういバランスがささいなことでも一気に崩れ、数年に一度は各国に破滅的な危機をもたらす。それを最終的に始末するのは一般人の税金だ。

 今回のヨーロッパ金融危機も3年前のリーマンショックの後遺症だろう。そのリーマンショックは奇怪な金融商品が引き金となった。あの危機を乗り切るための巨額の財政出動が、世界各国の財政を窮迫させたのである。

 今や、多くの国が、1つのグローバル経済の器の中にあって、程度の差はあれ、同じような局面に立ち、共通の問題を抱えるに至った。

 グローバル経済には功罪両面がある。マイナス面をコントロールして、プラス面を助長する国際協調とその枠組みの整備が不可欠である。グローバル経済を檻に入れて馴らし、この猛獣が暴れるのを防ぐことが急がれているのだ。それを今まで怠ってきたことが問題なのである。