プライベートも仕事も諦めない
アメリカ人の多様な生き方

部下を飲み会に誘ったら残業代請求…世代間ギャップの解決法「部下は上司の誘いを断るべきではない」という価値観を頑なに持ち続ければ、若手に嫌われる上司になってしまう。そもそも、日本の中堅以上のサラリーマンが一般的に持っている価値観は、今や世界的に見ればかなり特殊である

 アメリカに留学していた頃、驚いたことのひとつは、自分の周りの人々の「生き方の多様さ」だった。

 筆者が所属していた大学は全米でも有名校だったため、教授陣は総じて優秀な人が多かった。だが、その中でも、24時間仕事に没頭する人、家族との時間を大切にする人、研究よりも学生の教育に熱心な人など、様々な先生がいた。

 筆者と同期の学生も、すでに結婚して子どもがいる人もいれば、自分の会社を持っていて、そこを休業してきている人もいた。

 彼らに共通していたのは、「自分の幸せな生き方とは何か」を真剣に考えて、それを実践していたということだ。アメリカでは基本的に価値観の多様さは尊重される。したがって、自分独自の価値観を持つことは重要で、周りもそれを尊重する。

 筆者の所属していた学部のある部門の女性事務長は、家族の健康と子どもの教育のため、学校から遠く離れた自然の多い場所に住んでいた。彼女にとって、それは重要で価値のあることだったからだ。

 だが、都市部にある大学に通うと、朝のラッシュ時には、家から3時間近いドライブになってしまう。日本ならば、この時点で遠くに住むことはあきらめるか、職場を変えるかの選択をするのが普通だろう。だが、この女性は大学と交渉し、朝のラッシュ前に出勤、夕方のラッシュ前には帰れるように勤務時間を変更した。彼女のオフィスアワーは、朝6時半から、午後3時半までだった。

 そのことがアナウンスされたとき、筆者は驚いたものだった。なぜなら彼女の仕事の多くは、先生や学生と話したり、打ち合わせたりしなくてはならないもので、彼女のオフィスアワーは、他の人々のスケジュールにも影響を与えるものだったからだ。

 だが、実際は、誰も文句を言わなかった。ミーティング時間が少し早まったくらいで、電話やメールを活用し、仕事に支障はほとんどなかった。彼女自身のスキルの高さもそうだが、周りの寛容さにも、当時の筆者はびっくりしたものだった。