出張業務の予約・購入プロセスをアウトソーシングし一元管理する仕組み、BTM(ビジネストラベルマネジメント)の導入が本格化している。国内市場が縮小しグローバル化が進むなか、ビジネス成長には海外出張が欠かせない。そうした出張業務の管理をアウトソーシングする動きが進んでいるのだ。内外のBTM事情に詳しい松蔭大学観光文化学部の北村嵩准教授に、BTMのメリットと現状を聞いた。

 1990年代に米国で開発されたBTMは、日本でも出張をトータルに管理するシステムとして定着しつつある。BTMでは専門会社が出張業務を包括的に受託し、費用の削減は内部統制の強化、経費関連業務の効率化、危機管理などのマネジメントを行う。

 これまで複数部門でバラバラに実行されていた煩雑な業務を一元的に管理することで、出張業務全体が簡略化され、コスト削減がドラスティックに実現できるのだ。

BTM導入で実現する
さまざまなメリット

北村 嵩
松蔭大学観光文化学部 准教授  JAPAN NOW観光情報協会理事
日本交通公社に入社後、JTB米国法人副社長、JTB取締役、JTBハワイ社長、JTBワールド社長等を経て現職。BTMのほか、インバウンドトラベル、米国観光事情などが専門。

 北村嵩准教授はコスト面でのメリットを次のように説明する。

「BTMを導入すると、一括購入のスケールメリットを生かせるため、航空会社やホテルに対する購買力がアップし、サプライヤーとの交渉で価格を安くできます。これがダイレクト・セービング(直接コスト削減)といわれるもの。もう一つはインダイレクト・セービング(間接コスト削減)と呼ばれるもので、BTMを導入すると、出張業務にかかわる事務部門の人件費や時間を削減できるという効果があります」

  出張業務の裏側では、経理や人事、総務などの部門が、仮払金の精算から領収書の審査まで、膨大な時間と労力を費やしている。それを簡素化することで、社員を本来の業務に専念させることができ、結果的にコスト削減に繋がるのだ。海外ではむしろ、このインダイレクト・セービングがBTM導入の主眼となっているともいわれる。

  またBTM導入は、出張経費のキャッシュレスも実現する。企業が航空券や宿泊先のホテルを一元管理するため、社員自身が安いチケットや宿泊先を探す必要がなく、その結果社内の出張規定が遵守され、ムダな出費を抑えられるというメリットがあるのだ。

 一方、出張者自身へのメリットも大きい。出張データが一元管理でプロファイルされるため、たとえば航空機では窓側の席が希望など、自分の好みが反映された出張が自動的に再現される。予約システム(CRS)の進化で予約方法もシンプルになり、出張経費の精算もストレスにならない。

 企業によっては、ダイレクト・セービングのぶんを航空機の座席や宿泊先のクラスアップに反映させるケースもあり、出張のモチベーションも向上する。