福島第1原子力発電所事故による放射能漏れで、食を取り巻く環境は一変した。国が安全宣言を出したあとに暫定規制値を超過する食品が流出するなど、公的検査の信頼性が失墜するなか、食品関連企業は独自に放射能検査を始めた。食の安全はいったい誰がどう保障するのか。ずさんな食品放射能検査体制の実態を明らかにする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

 千葉県柏市。駅前商店街の雑居ビル2階の放射能測定器レンタルスペース「ベクミル」には、平日の朝からひっきりなしに客が訪れる。手に持っているビニール袋には、刻んだ食品が入っている。測定器がずらりと並ぶ店内では、20分980円で持参した食品の放射能を測ることができる。

 柏は首都圏でも空間線量が局地的に高いホットスポットとして知られる。「公的な検査では測り切れないものを自由に測れる検査設備が欲しい」という請願が市民から出されたが、市はこれを却下した。そこで民営のベクミルがオープンするとたちまち客が殺到。昨年秋は、1日に70人もの人が20坪ほどの店に詰めかけ、店の外まで行列が続いた。

 原発事故以降、食に対する“不信”は根強く消費者の心に刻まれている。自治体が検査し、一度安全宣言を出した食品から次々に暫定規制値を超える放射性物質が検出されたからだ。昨年4月には茨城で放射性セシウムに汚染されたコウナゴが見つかり、昨年11月には福島で同様に汚染されたコメが見つかった。いずれもその直前に、“安全”というお墨付きが出されたばかりだった。

 なぜ“安全宣言”は何度も覆されたのか。それは国の食品放射能検査体制が穴だらけだからである。

偏る検査品目と地域
ずさんな国の検査体制

 問題点は大きく三つある。第1に、検査の品目と地域の偏りだ。

 1月末までに厚生労働省に寄せられた累計検査数約9万6000件のうち、約6万件を牛肉が占める(図参照)。福島産の稲わらを経由して牛肉の汚染が広がり、現在も10の県が牛肉の全頭検査を行っているからだ。うち、232件で暫定規制値を超えた。

 一方その他の食品では、茶が2227件の検査で暫定規制値超えが193件、水産物は6003件の検査で同195件見つかった。暫定規制値超えの比率は牛肉よりはるかに大きいにもかかわらず、検査件数は格段に少ない。