大学受験・公務員試験の小論文受験者必読。
「どうやって評価が決まるのか?」
「自分の書いた答案は、どこが悪いのか?」
「どうすれば、合格答案が書けるようになるのか?」

本連載では、NHKアナウンサーの小論文講師で、異例の大重版が続く現在8刷5万5000部超のベストセラー『全試験対応!直前でも一発合格! 落とされない小論文』の著者今道琢也氏が、これらの疑問に明確な結論を出します。本番直前からでも、独力で合格水準まで到達するスキルと考え方をお伝えしていきます。
(構成:今野良介)

「何も考えていない答案」に価値はない

大学入試によく出題される「課題文付き」の小論文で陥りやすいミスの1つが、課題文を「受け売り」することです。これは、小論文だけでなく、大学のレポートなどでも同じことが言えます。

次の問題を見てください。

大学入試で「落とされる」小論文の代表例<br />受験生のみなさま、がんばってください!

【問題】
下記の文章を読んで、あなたの考えたことを述べてください。

日本の英語教育は立ち遅れている。世界はグローバル化し、ビジネスの場では英語を話せる人材が求められているのに、学校ではいまだに文法や英文解釈を中心とした授業が行われている。これは明治以来の英語教育の伝統だが、いい加減改めるべきだ。小学校から大学まで習っても一向に話せるようにならないのでは、英語を学んでいる意味がない。文法や英文読解の授業はそこそこにして、リスニングやスピーキング中心の授業に早急に改めていくべきである。グローバル競争に勝ち抜くには、手をこまねいている暇はない。英語による生徒同士のディスカッションやディベートをどんどん取り入れるべきだ。

【低評価の解答例(1)】
日本の英語教育を改めるべきだという筆者の考えに、私も賛成だ。政治、経済、文化、どんな分野でも国際化が進んでいく中で、英語力がますます重要になってくるからだ。これまでの教育方法を、全面的に改めるべきだ。これからの時代に大切になってくるのは話す力、聞く力である。小学校の早い段階からこの2つに重点を置いて教育すべきである。中国やインドなど新興国の追い上げが激しくなる中、日本も国際舞台で活躍できる人材の育成に力を入れるべきである。

【高評価の解答例(1)】
筆者は英語をビジネスの手段としてしか捉えていない。しかし、英語を学ぶ目的はもっと幅広いものである。たとえば英文学の研究者や翻訳家を目指す人にとって大事なのは厳密な英文解釈や文法の知識であって、リスニングやスピーキング力ではない。また、ビジネスの現場であっても英文解釈や文法が役に立たないとは言えない。契約書を読んで理解したり、会議の資料を作ったりするときには、英文を読み書きできる能力が必須であるからだ。どちらか一方に偏った教育をするのではなく、バランスのとれた教育が大事なのだ。

「課題文のコピー」は
論文としての価値がない

学者が論文を書こうとするとき、最初にやることは、過去の論文を検索し、同じテーマで書かれた論文が存在しないかどうかを調べて、内容を分析することです。

なぜなら、同じ内容の論文は書く価値がないからです。ただし、同じテーマであっても、違う角度から書かれていたり、結論が違っていたりすれば、論文として十分書く価値はあります。

課題文式の小論文も同じです。大事なのは、「あなたの考えたこと」です。課題文に書いてあることをそのままなぞっただけでは、「何も考えていない」のと同じとみなされます。

高評価の解答例(1)は、「英語をビジネスの手段としてしか捉えていない」「ビジネスの現場であっても英文解釈や文法が役に立たないとは言えない」という筆者の主張の弱点を突き、反論することに成功しています。そして「バランスのとれた教育が大事」という、自分なりの結論を提示しています。