人気ブログ「金融日記」を執筆する藤沢数希氏がホストとなり、ビジネス界の注目パーソンと対談を繰り広げる新連載「藤沢数希の金融対談日記」。1人目のゲストとして、かつてライブドアで取締役を務めた熊谷史人氏に登場いただいた。同じく上場廃止が噂されたオリンパスへの率直の気持ちを語った第1回は、11万PVを超える反響を呼んでいる。
今回は、フジテレビに対する第三者割当増資など、ライブドアの資本政策の中心的な役割を担った立場から、ライブドア事件の裏側とその皮肉な結末を明かしてもらった。

株価の仕組みも知らなかった担当検事

藤沢  そういえば、熊谷さんは2004年に取締役になって、次の日の決算発表が粉飾になってしまって、経営者としていろいろな責任を取らされることになったんですよね。

熊谷  そうですよ。たった1日です!

藤沢  ご愁傷様です。そして2006年1月16日の月曜日、運命のライブドア本社強制捜査ですね。「抜き打ち強制捜査」の割には、なぜか大手テレビ局が、六本木ヒルズでたまたまテレビカメラを持ってみんな集まっていました(笑)。それから、ホリエモンが逮捕されて、ホリエモンが検察のストーリーに従わず徹底抗戦するから、ちょっと報復的な感じで、次々とライブドア経営陣が逮捕されていき、最後に熊谷さんも逮捕されてしまいました。

vs元ライブドア取締役・熊谷史人氏(2)<br />外資のハゲタカが大儲けしたライブドア事件熊谷史人
(くまがい・ふみと) 
2002年ライブドア入社。2004年12月、最年少でライブドア取締役就任。ライブドアの資本政策や金融・投資ビジネスで中心的な役割を果たす。2006年2月、有価証券報告書の虚偽記載容疑で東京地検特捜部に逮捕。2007年6月、懲役1年、執行猶予3年が確定。現在、幅広い業種の会社に対するコンサルティング事業を展開。ツイッター・アカウント: @kuma1977

熊谷  懐かしいですね。強制捜査の日なんて、東京地検の担当官は、当時私は決算やファイナンス関連の担当取締役兼執行役員だったにもかかわらず、私のデスクには見向きもせず、PCは押収したものの、机や棚にあった書類や手帳の類は一切押収しませんでした。挙句の果てに、取調べに呼ばれても、私の担当は会計や資本政策のレクチャーだったんです(笑)。私の担当検事なんて株価がどうやって形成されるかも知りませんでした(笑)。現場の検事は、会計や資本政策は専門外のド素人なんです。

 藤沢  どんな達人でも最初はみんな初心者ですよ。生暖かく見守りましょう。

熊谷  正直、私まで逮捕されるとは全く思っていませんでした。堀江さんが「全て私が悪いんです」と嘘でも言ってくれたら、私は逮捕されていなかったと思いますよ。だけど堀江さんは完全否認ですからね。特捜部の検事には「堀江は事件の事は一切話さない。話すのは宇宙と食事のことだけだよ。打合せの内容は覚えていないと言うくせに、その打合せの後、ビルの地下のレストランでカツカレー食べたことは饒舌に話すんだよ」と愚痴られました。

藤沢  (笑)。