投資を始めよう、と思ったときに、近くの銀行などへ行って「私に合ったものを選んでください」と言ってしまうと、9割以上の確率で自分に合ったものではなく「その時に売れているもの」や「売りたいもの」を勧められます。勧められたものを購入すると、失敗につながりますし、投資の知識も身につかないもの。
人気FP深田晶恵さんの連載4日目は、自分に合った投資商品をどうやって選べばいいのか、その方法をご紹介します!

失敗を避けるための
効果的な方法とは?

 投資というのは、万人にとって同じ正解はありません。資産を多く持っている人は、無理に投資しなくてもいいと思いますし、個人の性格によって合う商品、合わない商品があります。

一気に投資はしない!<br />まずは「つまみ食い」でお試しする深田晶恵(ふかた あきえ) ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さ ない独立系FP会社である生活設計塾クルーのメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い手寄り」のマネー情 報を発信している。15年間で受けた相談は3000件以上。日本経済新聞夕刊、日経WOMAN、日経ビジネスAssocie等でマネーコラムを連載中。お もな著書に『30代で知っておきたい「お金」の習慣』、『住宅ローンはこうして借りなさい・改訂3版』(ダイヤ モンド社)など。
twitter:http://twitter.com/akiefukata

  ですから、自分に合う投資法や投資商品を見つけるためには、失敗を避けながら、いろいろなマネー商品を少しずつ買ってみる『つまみ食い投資』をしていくといいと思います。

 いろいろな商品をつまみ食いしてこそ、自分に合った商品がみつかると私は思います。でもだからといって、どんな商品でもつまみ食いすべき、というわけではありません。

 繰り返し述べてきましたが、肝に銘じておきたいのは、『売り手に商品を選んでもらってはいけない』ということです。

 金融機関にあなたに合った商品を選んでもらうことは難しく、金融機関が売りたいもの、勧めやすいものを勧められる可能性大。また金融機関は自社で扱っている商品の中でしか提案はできません。それがあなたに合っているかどうかは分かりませんし、低コストでいい商品だとは限りません。

 今、売れ筋の商品で「選んではいけない代表的な商品」をご紹介しましょう。

投資信託の「毎月分配型」は、
売買の経験が積みにくい

 『つまみ食い投資』で大切なのは、投資の練習を積むことです。投資は、買って売ってひとつの経験。したがって、いつでも売ることができる商品、売るタイミングがみつけやすい商品を選ぶことが大切です。

 売る、というのとは遠い位置にあるのが、『毎月分配型(まいつきぶんぱいがた)』の投資信託です。みなさんも少しは聞いたことがあるかもしれません。投資信託は持っている口数に応じて『分配金』をもらえます。もちろん、運用がうまくいかなかった、分配金を出さずにその分を投資に回してもっと収益を上げる、などの理由で無分配の投信もあります。

 その「分配金」を毎月受け取れるのが、「毎月分配型」と言われるもので、現在、日本で多くのお金を集めているほとんどの投信がこのタイプです。

 この商品は、投信の値動きをみながら売るというより、分配金目的で買うというのが普通です。

 毎月分配型には債券に投資するタイプ、高配当株に投資するタイプ、リート(不動産)に投資するタイプなどがあり、投資対象はさまざま。海外の債券に投資するタイプでは債券の利子を中心に分配金が支払われますが、債券の金利が低いと受け取る分配金も減ってしまいます。

 分配金は運用によって得られる果実ですから、増えたり、減ったりするのは当然なのですが、分配金目的で買った人は分配金が下がれば魅力を感じなくなりますし、新たに買おうという人もいなくなってしまいます。

 そのため毎月分配型の投信の多くが、過去の運用益や、そもそもの元本を取り崩して無理な分配をする傾向が強まっています。分配金を受け取っても、一方で基準価額が下がっていたのでは、自分のお金を取り崩しているのと変わりません。また分配金の20%(現在は軽減措置により10%)が税金として差し引かれるなど、投資効率にも難があります。

 こういった無理に分配金を出しているかどうかが、投資家にはわかりづらいこともあり、現在、金融庁が分配型投信の規制を検討するなど、問題になってきています。

 毎月分配型の広告などには、『分配利回り』という言葉が出てくることがありますが、これも要注意。高いものになると15%などという表記があるものもありますが、本当の意味での利回りを計算するなら、1年間で受け取った分配金の合計額から基準価額の下落分を引いた額をベースに計算すべきです。みせかけの利回りに心を奪われると、失敗につながりますから、十分に注意してください。

 この、毎月分配型の投信は、いつ売ったらいいか分からない、売るのは抵抗がある、という人にとっては便利なシステムともいえますが、知らずに損をしている場合も多いですし、高い分配金を支払うために複雑な仕組みになっているものが多く、商品の値動きがわかりづらい、売るのが難しいなどの理由から投資の練習には不向き。「つまみ食い投資」の候補からは最初に外すべき商品といえます。