前原誠司国土交通大臣は、経営危機にある日本航空(JAL)の再建を主導する「JAL再生タスクフォース」を発足させた。JALが国土交通省との連携で策定作業を進めていた経営改善計画の実効性を否定し、“チーム前原”の手で資産査定と再建計画の策定を進めている。その実効性はいかほどのものなのか。

 「銀行と直接折衝する必要はないと言い渡された」。日本航空(JAL)経営陣は憤った。

 「“チーム前原”に任せ切っていいのか」。メガバンク幹部もまた不安をのぞかせる。

 9月25日、前原誠司国土交通大臣はJAL再建を主導する「JAL再生タスクフォース」を立ち上げ、10月末をメドに新たな再建計画案の骨子を作る方針を示した。JALが九月末を目標に策定作業を進めてきた経営改善計画は実効性を疑われ、はね除けられた。

 タスクフォースのメンバーは高木新二郎・野村證券顧問や冨山和彦・経営共創基盤取締役など旧産業再生機構の出身者が中心。彼らは資産査定、再建計画を策定する作業チームにJALの部課長級を迎え入れた。

 一方でJAL現経営陣には、外資との資本提携交渉、事業スポンサー候補との交渉、企業年金改定の準備など今まで進めてきたものをすべて一時中止するように指示した。銀行団には職員を派遣するように要請したが、ここでも求めたのは実務要員。戦略を共有する幹部級ではなかった。

「手足を縛られているうちにも信用は低下し、海外の旅行会社などで取引を現金支払いに変更してくるケースも出てきた。計画策定の前に資金ショートしないだろうか」。JAL経営側は焦る。

 30日、前原大臣は会見で「自主再建は十二分に可能」と発言し、信用不安の解消を図った。豪州の保険会社がJALの航空券を保険の適用除外にすると旅行会社に通告し、また英国の金融機関はJALの航空券のクレジット決済を停止する方針を示したからだ。大臣発言を受けて、いずれも取引制限措置は撤回した。

 それでも市場の評価は厳しく、JALの株価は急落した状態のまま這っている。企業の信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の市場でも900ベーシスポイント付近で高止まりしていたものが、さらに1400ベーシスポイント前後まで拡大している。

 ただ、銀行団が真に懸念しているのは、こうした足元の危うさではない。「チーム前原が財務リストラと並行して長期成長戦略を構築できるのか」という点だ。