企業活動を行う上で欠かすことのできない「情報」。情報は単に保存しておくだけではなく、活用することで初めて「情報資産」としての価値を持ってくる。電子記録に関する調査研究活動を行う日本情報経済社会推進協会の木村道弘氏に、“情報管理”から“情報活用”の仕方について話を伺った。

木村 道弘
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)
電子情報利活用推進部主席研究員
きむら・みちひろ。アーキテクチャとセキュリティを専門にシステム設計に携わる。2000 年から電子記録の諸課題に取り組み電子記録の利活用に向けた活動を推進。株式会社電子商取引安全技術研究所(ECSEC)顧問、ARMA 東京支部理事、電子記録マネジメントコンソーシアム(ERMC)イニシアティブ委員会委員長。

 情報セキュリティやコンプライアンスに対する意識の高まりから、多くの企業が紙やデータといった情報の適切な保存に努めるようになった。しかし、企業活動によって発生する情報量は日々増えていく。保存する情報量が多くなればコストがかさみ、取り扱いの手間も増える。「リスクと価値の視点で情報を位置付け、それぞれの情報に合わせた保存方法を設定することが大切です」と指摘するのは、日本情報経済社会推進協会の木村道弘氏だ。

「例えば、知財や顧客情報などはリスクも価値も高いので、リスクを低減しながら積極的な活用を進める。価値の低くなった情報を廃棄する。従業員情報は、企業にとっての価値は低くてもリスクは高いので、厳重に管理する。そのように分類することで、情報保存に関するリスクとコストをコントロールできます」

情報を探しやすくする
「ケース管理」

 情報の保存の仕方にも工夫が必要だ。単に情報を保存しているだけでは、検索がしにくく、活用につながらないからだ。情報の検索性が低いことは、さまざまな弊害を生む。企画や研究などの業務の生産性が低下するだけでなく、訴訟や監査の際に素早い対応ができない。経営者が最新の情報源を必要なときに入手できず、意思決定に遅れが生じる。顧客や株主に正しい情報を提供できない……。ポイントは情報が発生した段階にあると木村氏は言う。

「文書を扱う業務には起案から保存・管理までの流れがあり、中でも情報収集・文書作成の段階で最も業務量が増大します。例えば企画を立てるなら過去の企画書やマーケティングデータを参照するといった情報収集に時間がかかるのです。その段階を効率化すれば、業務全体をスピードアップできます」