米国経済の回復は続いているが、「ワシントンポスト」「ABCニュース」の3月世論調査ではオバマ大統領の支持率は46%へと下落した(2月は50%)。「オバマの経済政策を支持する」と答えた人は、2月の44%から、3月は38%へと急落した。最大の要因はガソリン価格上昇にある。ガソリンに対する政策については、65%もの人が「支持できない」と回答した。

 株価が上昇しても、ガソリンが値上がりすると政権支持率が落ちるのが米国である。とはいえ、原油価格高騰を避けようとイランに柔軟な態度を示すと、それが支持率低下を招く恐れもあり、オバマはジレンマに直面している。

 共和党大統領選候補者の先頭を走るロムニーは、オバマ批判の戦術を最近変更し、ガソリン価格を攻撃材料にしている。3月15~19日のギャラップ調査では、もしオバマとロムニーの戦いなら、46%がオバマに、50%がロムニーに投票するとの結果が出た(前回調査は共に48%)。再選を狙うオバマ陣営としては、11月の選挙までの間、経済指標を改善しつつ、原油価格の上昇を抑え込む必要がある。そういった意図はFRBにも影響を与えるだろう。

 長期金利の低下を目的にFRBが昨年10月から実施しているオペレーション・ツイストは6月末で終了する。昨年も一昨年も、米経済は春ごろまでは勢いがあったが、その後息切れした。今年は夏から秋の経済情勢が大統領選に大きな影響を与える。減速が明確になった後に追加緩和策を行うのでは選挙対策にならない。また、4月からモーゲージ保証料が引き上げられ、住宅ローンのコストが上昇するという不安要因もある。もし米国の経済指標に陰りが見えてきたら、バーナンキ議長は、MBS(モーゲージ担保証券)大規模購入策を迅速に導入して、長期住宅ローン金利の低下を促すだろう。

 ただし、それを見て市場やマスメディアが「“QE3”だ!」とはやし立て、心理的な影響で原油価格が急騰したらまずい。このためFRBは、MBS購入策と同時に、資金吸収オペを行うことを検討し始めた様子だ。銀行の手元資金(準備預金)を増やさない「不胎化」を行えば、市場は“QE3”というレッテルを貼れなくなる。

 しかし、不胎化策には問題もある。資金吸収オペが累増していくと、短期から中期のドル金利に強い上昇圧力が加わる恐れがある(すでに現在のオペレーション・ツイストの不胎化策でその兆しが表れており、円安ドル高の一因になっている)。FRBが追加緩和策を導入する際は、多方面への配慮が必要になるといえる。

(東短リサーチ取締役 加藤 出)

週刊ダイヤモンド