残念な地方PR動画はなぜ量産されるのか兵庫県南部地域を擬人化したアイドルの動画が「炎上覚悟」で公開されたにもかかわらず、あっさり配信停止に。残念な地方PR動画はなぜ量産されるのか

PR動画をあっさり配信停止
「東播磨ちゃん」が読み違えたこと

 兵庫県南部地域を擬人化したアイドルの動画が「炎上覚悟」で公開されたにもかかわらず、あっさり配信停止になったことが話題になっている。兵庫県の東播磨県民局が制作した動画は、兵庫県南部の3地域をアイドルグループに見立てたものだ。

 アイドルグループ「HYOGO」のメンバーは3人組なのだが、設定としては「異人館など華があるリーダーの神戸ちゃんや、城という魅力を持つ姫路ちゃんと違い、自分に自信がない東播磨ちゃん」という形になっている。

 自分に自信のない東播磨ちゃんは、その後周囲に励まされながら、自分にも明石の明石焼や加古川のかつめし、高砂の焼き穴子など、多くの魅力があることに気づき、自信を持つようになる。アイドル東播磨ちゃんの成長物語を通じて、明石、加古川、高砂市、稲美、播磨町からなる東播磨地域の魅力をPRする動画だった。

 当初、「ネット炎上は覚悟のうえ」と意気込んでいた県民局だが、明石市長をはじめとする明石市から猛抗議を受けて、あっさりと動画配信を停止してしまった。ネットの炎上は覚悟していたが、足もとの炎上に対する覚悟はできていなかったことになる。

 県が制作するPR動画が市の抗議で削除された例としては、昨年7月に宮城県が公開した壇蜜さん出演のPR動画がある。内容が明らかに性的なイメージを想像させるもので、公開直後に仙台市の奥山恵美子市長は「配慮に欠ける」と宮城県に対して抗議した。一方の村井嘉浩宮城県知事は、「非常に面白くていいのでは」と当初は評価していたが、結局8月に入って動画サイトから削除することを決定した。

 相次ぐ自治体のPR動画炎上には、そこはかとなく「残念感」が漂うが、それらはどこがいけなかったのだろうか。

 壇蜜さんの件は、宮城県の知事や職員の意識が残念だったということだ。今どきやっていいことといけないことが、わかっていなかったとしか言いようがない。しかし今回の兵庫県の問題は、それとは内容が異なり、簡単に当事者が残念だったという話ではない。そこを説明してみたいと思う。