拡大するシニア市場を狙う<br />イオンの次世代SCの“中身”リーマンショックで苦境に立たされたGMSだが、事業改革により回復基調にある(写真は埼玉県越谷市のイオンレイクタウン)
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「これまでのファミリーをメインターゲットとしたショッピングセンター(SC)から、すべての世代に対応したSCに進化させていく」(家坂有朋・イオンリテール副社長)

 イオンは4月25日、千葉県船橋市にあるイオンの食品スーパー「マックスバリュ新船橋店」の跡地に、SC「イオンモール船橋」を開業する。中核となる総合スーパー(GMS)「イオン船橋店」のほか、スポーツ専門店、大型書店、衣料品店、診療所など158の専門店が入る。

 従来の店舗との大きな違いは、シニア世代への対応にある。

 例えば、食品売り場では生鮮食品や惣菜などの少量パックを大幅に充実させ、シニアや単身者の需要に応える。

 また、イオンでは初となる金融相談拠点「暮らしのマネープラザ」を設け、イオン銀行やイオン保険サービスなどのグループ金融会社のほか、野村証券や第一生命保険などを集め、資産運用や保険の見直しなどの相談に応じる。

 さらに、13の診療科目がある総合クリニックを設け、総合受付で各科目の診療を受け付けられるようにする。

 そのほか、高齢者や障害者のサポートを行うため、店内には20人のサービス介助士2級取得者を置く。そして約700人の従業員のうち、約550人が認知症サポーター養成講座を受講しており、「今後、全従業員の受講を目指す」(イオン)という。

 こうした取り組みにより、従来のメイン顧客である30~40代のファミリー層から60代半ば以降のシニアまでの3世代で買い物ができるSCを目指し、年間1200万人の利用を見込む。

 背景にあるのは、シニア市場の拡大だ。

 今年から団塊の世代が65歳を超え、今後、高齢者の増加に拍車がかかる。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口推計」によれば、65歳以上の人口は、2010年で2948万人だが、今年は3000万人を超え、さらに20年には3612万人に達する見通しだ。つまり、10年間で高齢者の人数は664万人も増えることになる。

 リーマンショック以降、GMS事業の低迷に苦しんだイオンだが、自転車・酒類・ペット・手芸などの専門店化やプライベートブランドの強化などが奏功し、最悪期は脱している。11年度第3四半期で、GMS既存店売上高は前年同期比0.6%増となり、営業利益は54億円の増加と、グループ全体のけん引役となっている。

「イオンモール船橋でシニア対応のモデルをつくり、他店にも移植していく」(イオン)

 GMS事業回復の鍵ともいえるイオンのシニア強化の取り組みは、今後、業界関係者の注目を集めそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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