上司に認められない、仕事を真面目にこなしているのに評価してもらえない、上司に苛められると嘆く人は多い。

 あなたがどれほど期待したって、名伯楽と言われる、人材を発掘し育てる人なんかそんなにいるもんじゃない。

 たいていの上司は、自分のことで精いっぱいで、あなたの実力を認めるほど、心の余裕がない。またあなたが認められ、自分を追い越して行くことに、極端な嫉妬心を抱いている上司もいることだろう。

屈原の悲劇

 中国の春秋戦国時代に屈原(BC343年~BC278年)という詩人であり、政治家である人物がいた。

 屈原は有能で清廉な人だったので、楚王の信頼が極めて厚かった。そのため周囲の妬みを買い、讒言(ざんげん)に会い、最後は懐に石を抱き、汨羅(べきら)に身を投じて死んでしまった。

 ちなみに死んだ日が5月5日で、屈原の死を悲しんで人々が汨羅にちまきを供えたことから、子どもの日にちまきを食べるようになったという。

 屈原の悲劇は、王、すなわち上司に恵まれなかったことだ。周囲の讒言に耳を貸し、一番、自分を大事に思ってくれていた屈原を死に追いやってしまったのだ。二千数百年前だって、現在だって上司に恵まれないのは同じだってことで、ちょっと安心しないか(しないだろうな)。

 屈原が汨羅に身を投げる際に読んだ歌が、「懐沙の賦」だが、それには自分の思いが認められないことを嘆き、

「伯楽すでに没す、驥(き)、はたいずくんぞ程(はか)らん」

 と詠っている。「伯楽と言われる人はもはやいない。駿馬を見極めることができる人がいない悲しさよ」というような意味だ。