政府はエルピーダメモリ社に対する公的支援を決めたようだ。6月27日付の「日本経済新聞」(朝刊)によると、政府は「改正産業活力再生法(産業再生法)」の第一号案件として300億円程度の出資を正式に認可する見通しで、これに7月にも設立される予定の産業革新機構からも数百億円の支援が予定され、民間銀行による協調融資も合わせると2000億円規模の支援になる予定だという。

 率直に言って、苦しい企業があまたある中で、どうしてエルピーダメモリ社が支援対象になるのかが疑問だ。「グループで6000人弱の従業員を抱え、雇用への影響も大きい」と記事にあるが、従業員10人の零細企業600社でも雇用には同様の影響があるわけで、エルピーダメモリ社が「大きい」ことは、支援の正当な理由として納得しがたい。

 「日経」は、エルピーダメモリ社の「経営が不安定になれば半導体供給などにも影響を及ぼしかねず」と1面の記事には書いているが、11面の解説記事には「仮にエルピーダから製品が供給されなくても、韓国勢から代替調達することは可能だ」とはっきり書いている。思うに、日経の記者は、「エルピーダへの支援はやっぱりヘンだ!」と感じながら、読者がよく読めば分かるように皮肉を書いているのではないか。

 あわせて読むとこれは皮肉だろうという箇所がもう一つある。産業革新機構については、これが「先端企業などに資金支援するため15年の時限措置で設立される株式会社」だと1面に解説されているのだが、11面にはDRAMが「高機能を競うシステムLSI(大規模集積回路)と異なり、メーカー間の技術差が乏しく」、「需給で価格が騰落する汎用品になっている」と書かれている。エルピーダメモリ社は「先端企業」ではないのだ。

 そもそも、企業は「先端」であることが尊いわけではない。加えて、先端企業を支援するのが目的だという組織が、汎用品の相場商品を作っている企業を支援するというのは納得し難い。エルピーダメモリ社への支援は二重におかしいのだ。

 しかも、記事によると、この会社の経営者は次のように言っている。

 「3年後には世界で2~3社に集約され、DRAMは安定したビジネスになる」。続けて記事本文に「坂本社長は市場の寡占化で市況を回復させ、収益を上げる将来像を描く」とある。要は、公的支援を使った体力勝負で寡占を目指して頑張るという話だ。